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『文字は、俺の国の文字と似ていたから、覚えやすかった。他は、特に出来ない』
「それだけでもすごいよ! 俺、今かなり興奮してる!」
うん。初対面の俺でも分かるわ。そういうわかり易い感情表現の仕方は、ジークそっくりだな。さすが兄弟。
「これ発表したら、凄いことになるよ!」
「それはダメだ」
間髪入れずに入った反対に、俺はフリークスと共に目を丸くしながら、発言者を見る。否定の言葉を口にしたのは、まさかのジークだった。こういう事なら、すぐ広めそうな奴がそんな事言うとは。
「僕もそう思います」
「「アミラまで!?」」
フリークスの素っ頓狂な声に、俺の声も重なる。まさか、あれ程喜んでいたアミラまでジークに同意するとは思ってもみなかった。
けど、なんか納得した。筆談出来るようになってそこそこ経つのに、それに関して、誰も屋敷を訊ねて来なかったからな。なんでだろうとは思ってたけど、まさか、そんな所で情報が止まっていたとは。アミラがこう言ってるなら、セルフィも屋敷の者に喋らないよう周知させてるのだろう。
「人間が、言葉だけじゃなくて、文字まで理解した。それって、魔法を使う側にしてみれば結構恐怖だからね。下手したら、人間が魔法を使えるようになるかもしれない。
元々人間は頭がいい事で知られてる。それが、自分達と同等の事ができるようになりましたなんてことになってみなよ」
血の気が引いていく。この先は聞かなくても分かる。人間じゃなくても、見えない恐怖に取り憑かれたものがやるのは、その原因の排除だ。俺がいくら魔法は使えなかったと言っても、もしもが残る限り、疑念は消えることは無いだろう。
元の世界に戻いたいがために文字を覚えた。が、それは俺自身の命を危険にさらすことだったのではないかと今更ながら気付いた。
「それに人間ブームで、人間に興味を持っている奴はごまんといる。中には、言葉に出来ないような酷い扱いを平気でするやつもいる。希少価値の高い人間ばかりを集めるコレクターだっているし、そういう奴らに限って欲しいものが出来たら、本当に手段を選ばない」
その争いに巻き込まれて、悲惨な死に方をした人間だっているんだ。そう話すジークの表情は、すごく悲しげだった。
こいつらにとって、人間はただの道具。壊れたら、新しいのを買えばいい。それに関して、何の感情も抱かないだろう。俺達のこの世界での立場は、所詮そんなものだ。
なのに、ジークは……。
「俺はそういうのを知ってる。たくさん見てきた。それをすべて救うなんて、偽善は吐けない。けど、だからこそ、自分が召喚して、飼育した人間には、安全な生活を、幸せな最後を迎えてほしいと心から思ってる。その為に俺が出来ることなら、なんでもする。それは、黒髪ちゃん……トールちゃんも同じだ」
なんで、そんな必死なんだよ。
お前にとって俺は、ただの売れた商品で、化け物とは関係があっても、俺との関係はもうないだろうが。
恐る恐る伸びてきた、ジークの触手を自分から手を伸ばして掴む。持ち主の心情を現すかのように、触手は微かに震えていた。
きっと、ジークは飼育員のプライドや、責任感でそう言ってくれてるのだろう。おちゃらけた奴だが、そういう所がしっかりしてるのは、売られてた時代に見てるから知ってるし、世話好きのこいつなら、そう思うのも何となく分かる。
けど、何故だろう。胸が、心が酷く締め付けられて苦しい。
ーーー
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