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④
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『集合写真とりたいんだけど』
「集合って事は、みんなでしゃしん撮ること?」
『そうそう。記念に』
「いいんじゃない? それって何枚もしゃしんにできるの?」
『あぁ。人数分出してやるよ』
セルフィも呼んで、皆に並んでもらう。お、いい感じじゃん。順応力高くて助かるわ。
「タイマーセットして……よし!」
俺はカメラをセットすると、皆の元へ駆け寄り、端に立っていたセルフィの横に入ろうとしたら。
「お前はこっちだ」
「わ!」
化け物の触手に体を引っ張られ、気付いたら奴の腕の中に収まっていた。……あ、と前を向いた瞬間、フラッシュが光る。
「お、とーれた?」
「……」
撮れた。綺麗に。ピンぼけもなく。俺を抱いてやけに化け物が満足そうな顔をしてるのがムカつく。
「トールくん! 俺にもしゃしん見せて!」
『ほら』
現像すると言った手前、断るわけにもいかず、全員に写真を配る。そしたら、皆喜ぶ喜ぶ。なんか、こういうの嬉しいな。
「ほーんと、すごいね!」
「家宝にする!」
「人間の世界は素晴らしい魔法具があるのですね」
「会社に飾ろっかなー」
「……」
『なんでお前は何も言わねぇんだよ』
けど、化け物だけは何故か無口で写真を見ている。綺麗に撮れたと思ってたが、なんか変な所でもあったか?
「お前と2人きりのしゃしんが欲しい」
……。
ーーパシャ。
『これでいいだろ』
自撮りで化け物と一緒に撮った写真を投げ渡す。こいつ、さらりと恥ずかしい事いってんじゃねーよ。
「大切にする」
「あっそ」
背後から抱きしめてくる化け物に、俺はそっぽを向く。俺との写真を見た時、化け物がとても綺麗で嬉しそうな笑顔を浮かべてて。それに思わず見惚れたのは内緒だ。
「ヒュー、お二人さん熱いねぇ」
「目潰し」
「あぶし!」
はやし立ててきたフリークスに目潰しをかます。ぷっ、兄弟2人で同じ戦法にハマるなよ。それから夜が耽るまで、皆と写真を撮りまくったせいで、写真用のフィルムはなくなってしまったが、俺としては満足だった。
「今日からtwitter毎日更新するか」
正直、きちんと届いているか分からない。送ってもこっちで見るようにピンぼけして読み取れないかもしれない。もしかしたら、自己満足で終わるかもしれない。それでも、何もしないよりはいいような気がした。
「母さん達が、なんかの拍子で見てくれるといいな」
これが、向こうの世界に帰る1歩になればいい。そう言い聞かせ、俺は微かに感じた寂しさを心の中にそっと隠したのだった。
ーーー
透琉のTwitter
@toru_aragane
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