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「ただいま、レオ」
「あ、帰ってきた。おかえりなさいリオン」
部屋に顔を出した奴を見た瞬間、俺は思わず固まってしまった。
顔は狼に近い。服の下からでも、分かるがっしりとした体型。俺達の肉なんて簡単に引き裂きそうな鋭い牙。睨まれたら即子供が泣きそうな程鋭い目は金色。古傷なのか、左目に刀身傷が走っている。
裏世界の方のテンプレートをすべて兼ね揃えた素晴らしい獣族が、そこにいた。
そいつと目が合った瞬間、フラッシュバックする光景。俺にのしかかり、ナイフを振りかざすあいつも、狼のような顔立ちをしていた。
違う、こいつはあいつじゃない。あいつじゃないのに……。
「お! 人間起きたのか!」
「来るな! 化け物!!!!」
気づいたら、跳ね起き、割った水差しの破片を握って、そいつへ向けていた。目を丸くする2人の前で、カタカタと震える右腕を反対の手で押さえる。破片を握った手は力を込めすぎているのか、鋭い切り口が手のひらを割いて、血が滴り落ちていく。
「来るな……」
「トール、さん?」
「お願いだ。来ないでくれ……」
知らぬ間に涙があふれる。怖い。その暗く、粘ついた感情が俺にまとわりついて離さない。
「……。レオ、俺は1回部屋の外に出る。この姿は、トラウマを引っ掻き回しちまうみたいだからな」
「分かった」
レオが頷くのを見て、リオンは外に出ていった。瞬間、一気に体の力が抜けてベットへ、へたり込んじまった。未だに震える腕が、あの時の出来事が思った以上に心へ傷を作ったことを証明しているようで気分が悪い。
「大丈夫ですか? トールさん」
「あぁ、大丈夫だ。すまねぇ。リオンは俺を助けてくれたのに、あんな態度とっちまって」
「いえ、僕も最初リオンと暮らし始めた時は、怯えっぱなしの泣きっぱなしで大変でした。トールさんを襲ったのが獣族との事だったので、当たり前の反応だと思います。それに、リオンはそんなことで傷付く人ではないので」
「……」
「だから、多分」
ーーガチャ。
「トールさんが怖がらない姿で、戻ってきますよ」
レオが笑う後ろから再び現れたのは、獣族ではなかった。
年齢は20代前半位だろうか? ツンツンとした剛毛の銀髪。鋭い金の瞳に、健康的な小麦肌。掘りが深い顔立ちだが、どこか野性味を感じる立ち住まい。
獣ではなく、獣のような雰囲気を纏った人間がそこにいた。
「久々に使ったが、おかしくねーか。レオ」
「うん。相変わらずかっこいい。ほら、大丈夫でしょ?」
「……お前も変われるのか」
なんか、さらに力が抜けた。確かに触手族が変われるんだから、こいつらが変われてもおかしくねぇよな。けどまぁ、顔だけ変わるって言うのは初めて見たせいか、少し新鮮だ。
「獣族は顔だけ変わることが出来んだな」
「力が弱くなるだけなので、あまり使う者はいないらしいのですけど。僕を怖がらせないようにと、リオンが覚えてくれたんです」
「へぇ」
「人間、これで怖くねーだろ?」
「あぁ、助かる」
反射とはいえ、あのままじゃ俺も話したいのに出来なかったからな。本当にありがたい。
「しかしまぁ、あの状態からここまで治るとは、神様々だな」
「かみ……?」
「お前は、あの時、神と傷を治す契約を結んだんだろ? 魔力がごっそり無くなってたのと、お前の持ってた指輪が消えた所を見ると、対価は魔力と指輪か?」
「ぁ……」
リオンに言われてあの夢を思い出した。
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