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④
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暫く撫でてると、コバルトが俺を押し倒すように抱きついてきた。驚いて、撫でてた手を離そうとしたら、少し掠れた声がきた。
「……もっと」
「ん?」
「もっと、撫でて……くれ」
「……。はいはい」
優しく優しく。母さんがしてくれたように、愛情を掌に込めてコバルトの髪を撫でる。少し癖があるけど、柔らかい髪。というか、こいつの髪、思った以上にさらさらしてるな。なんだっけ? そうそう。絹。絹とかこんな手触りな気がする。いつまでも撫ででたい気分だ。
不意にぼそりとコバルトが呟いた。
「お前は、俺が欲しくて堪らなかったものを簡単に当たり前のように、くれるのだな」
「は?」
なにいってるんだ、こいつ? 首を傾げると、きつく抱きしめられた。無意識だろうけど、触手も一緒に巻き付いてきて少し苦しい。
「トールにとって、普通の事かもしれないが、俺にとっては、お前が俺にしてくれる行動が、奇跡のようなものだったりするんだ」
「……」
「俺はお前から貰ってばかりだな」
撫でる。そんな誰でも簡単に出来ることを、こいつはされてこなかったのかよ。あまりの事実に愕然としてしまう。化け物という名の大き過ぎる枷は、こいつの過去をどれだけの当たり前を奪い、苦しめたのだろうか? 俺には想像しかできない。
けど、それがどんなに悲しくて、寂しい事なのかは、嫌でもわかった。だかこそ、これだけは、俺でも言える。
『俺で良ければ、いくらでも撫でてやる』
せめて、俺がこいつの傍にいれる間は、少しでもその奇跡を叶えられてたらいいなと思う。こいつは俺にもらってばかりっていうけど、俺もコバルトから貰ってばかりだし。
「明日も、撫でてくれないか?」
『いいぜ。それなら、俺達の挨拶にしようぜ』
「挨拶?」
『いってらっしゃいとただいまの』
そう魔石に書くと、コバルトは目を丸くして、泣きそうな顔をした。そっか、これもお前にとっては奇跡みたいなものなのか。
次の日から、俺とコバルトの挨拶が互いに髪を撫でることになった。フリークスから、コバルトの仕事が早くなったと感謝されたのは、それから少しあとの事だ。
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