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③(6/26加筆修正)
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「……。俺は、トールに出会うまで、自分だけのものが無かった。正直、欲しいとさえ思ってこなかった。抑えなければ、壊すことしか出来なかった俺には、持つ資格さえないからな」
「……」
「けど、お前に出会えた。神ですら殺すことができる程の魔力を剥き出しにした俺の触手に自ら触れ、親でさえ化け物と罵られた俺の本当の姿を見て畏怖の眼差しを向けなかったのは、トール、お前だけだった」
「……」
「そんなお前を俺だけのものとして扱いたい。誰にも渡したくないと思うのは、おかしいことなのか?」
「……」
なんとなくわかった。これがこいつにとっての愛情表現なのだと。
神も殺せるのなら、触れようとした瞬間、悲鳴なんかも上げられたのだろう。そんな年少期を過ごしてたら、嫌でも人と壁を作るようになる。意識無意識別にしてだ。
どうやら、俺はそれを全てぶち抜いてしまったらしい。
けどまぁ、そんな奴、こいつにとってみれば初めてだった訳であって。
現れる筈ないと思っていた者が自分の前に現れたり、手に入れるはずないと諦めていた温もりを与えられた場合、大概の奴は貪欲になる。それを失いたくないと強く思ってしまうのだ。
こいつみたいに、常に枯渇状態の奴は余計それが強い。こいつからすれば、俺はやっと降ってきた恵みの雨のようなものだろう。失いたくない。自分のものにしたい、他の奴に取られたくない。そんな感情が先行して、けど、すべてが初めてのこいつが正常に処理しきれるはずも無く、結果、転がりに転がってこうなったわけか。
ということは、自覚がないだけで、コバルトは俺のことを……。そこまで行き着いて、はっとした。
「今頃気付くなんてな」
この気持ちは、隠さないといけなかったんだ。絶対に悟られてもいけない。それが、自分のモットーを曲げるとしても、だ。
多分、コバルトがそれを自覚して、俺の気持ちに気付いたら。
俺はきっと、帰ることすら躊躇うようになっちまうから。
《 父さん……父さん!》
《ごめんな。けど、必ず戻ってくるから》
《父さん!!!!》
「……」
幼き日の過去の欠片が、頭を掠める。
そもそも、元の世界に帰った後、どのくらいの年月でこっちに帰って来れるのかさえわかっていない状態だ。数日ならまだいいが、それが数年、数十年。もしかしたら、分からないかもしれねぇ。
いつ戻ってくるか分からない、愛しい人を待つ辛さは痛い程、知ってる。だからこそ、好きな奴に俺と同じ思いなんてさせたくねぇ。
「せめて、元の世界から帰ってくるまで、気づかれる訳にはいかねぇ」
警戒心丸出しだったペットが懐くようになった。それ位が今の俺達には丁度いい。
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