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④
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そんなこんなでいろんな所を回って、今日から泊まる旅館に来てる。こっちもまぁ、老舗の中国旅館みたいで結構いい。中も、煌びやか過ぎず、かと言って地味過ぎず、とても居心地がいい空間だ。
今コバルトは、マッサージがあると聞いてそっちに行ってる。俺は一人で露天風呂でのほほんとしてる。屋敷の風呂はでかいけど、露天ではねぇからとても気持ちいい。
……いや、あそこが露天だったら、俺が羞恥心で死ぬか。
「はぁー。やっぱり風呂はいいなぁ」
早い時間のせいか、露天風呂に入ってるのは、俺しかいねぇ。これもゆったり出来てる理由だろうな。
屋敷を出る前にアミラにそれなりに強い人に見えない魔法をかけてもらったが、風呂とか入ると弱まるみたいだし。
「どうだい。風呂の湯加減は?」
「あ?」
いきなり声をかけられ、振り向くと、なんか美形がいた。
年は、30代前半くらいだろうか? 軽く波打った藤色の髪は、腰まであり、金の装飾品で軽く纏められている。瞳は、琥珀色で、柔らかな目元をしていた。真珠のように滑らかな肌。整った顔立ち。コバルトに劣らない背の高さだが、彼よりもしなやかな体付きをしてる。
けど、なんだろうか。このなんとも言えない緊張感というか、威厳というか。相手はニコニコとしてるのに、こっちはきちんとしないと失礼という気分になる。自然と背が伸びるのが嫌でもわかった。
「あ、えっと……」
筆談が出来ねぇから頷くと、向こうは満足そうな顔して風呂に入ってきた。ざぶんと湯が波立ち、溢れたのが流れていくを他人事のように見てしまった。
「ふー。ここの湯はいつも丁度良い湯加減だな」
「……」
「そなたは、どこから来たんだ?」
「……」
や、やべぇ。俺会話出来ねぇんだよ。その意味をこめてパクパクと口を開けバッテンを作ってみたが、通じるか……?
「そなた、喋れないのか?」
「!」
通じた! 勘違いされる前に全力で頷くと、そうか、それは不便だなと言いながら、目の前の奴は、俺の喉に指が触れる。
「これも何かの縁だろう。そなたに少しばかりプレゼントをしてやろう」
ーーバチ!
「っ!」
それなりの痛みが喉に走り、思わず男から距離を取る。慌てて喉を触るが、特に外傷はない。
なんだったんだ。今の。
「それの効力は数日続く。日付としても丁度良いだろう」
「なにいって……」
「コバルトに伝えてくれ。最終日に我の城に来るようにと」
言うや否や、飛沫が上がる。咄嗟に顔を覆った隙間から見えたのは、紫色のなにか。
「また会おう。トール」
「な!」
再び露天風呂が静寂が訪れる。
「なんだったんだ。今の……」
向こうは俺の事もコバルトのことも知ってた。つまり、コバルトの知り合いかなにかなのだろう。
「……出るか」
こんな旅先で変な事件に巻き込まれたくねぇな。そんな事を考えながら、俺は風呂場を後にした。
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