アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑥(7/8加筆修正)
-
「はぁはぁ……」
「あっ……はっ!」
息を整えていると、勢いよくコバルトの体が俺の上にのしかかってきて、思わず息が詰まる。おかげで意識が戻ってきた。
にしても、コバルトのやつ、かなり疲れてね?
「おーい、大丈夫か?」
「疲れた……動けない」
「めっちゃぐったりしてる」
「会社に缶詰になった時でも、ここまで疲れない」
「まじか」
初めてのセックスに、色々と振り切れちまったのかもしれねぇな。お疲れ様の意味も込めてポンポン背中を叩いてやると、抱きしめられた。
「トール」
「なんだ?」
首を傾げたら、コバルトは、少し躊躇うような素振りを見せたあと……ゆっくりと口を開く。
「……お前を買って過ごしていくうちに、俺の中に今ままで存在しなかった不思議な感覚が、徐々に芽生え始めた」
「不思議な、感覚?」
「トールが誰かと話していると胸が苦しくて、俺が知らない表情を見せていると、気が狂いそうになる。けど、俺に笑ってくれると、温もりをくれると、泣きそうな程、心がいっぱいになる。お前を独占したい。俺だけを見て欲しい。トールの全てが欲しい。お前といると良くも悪くも感情や欲望が溢れて止まらなかった」
「コバルト……」
「この胸に浮かぶものをなんというか、良くわかなくてずっと考えていた。けど、今やっとわかった」
コバルトが少し顔を上げる。俺の顔を写す瞳はなんかいつもよりも綺麗で、思わず見惚れた。
「トールとこうしていられるのが、お前と出会えた事が、とても幸せだ。きっとこれは、好き、という感情なんだろ?」
何を言われたか一瞬分からなかった。
今、コバルトが、幸せって、好きって言ったのか?
俺の事が?
こうやって、一緒にいることが?
「っ……」
「トール?」
涙がぼろぼろ溢れて止まらなくて、手で顔を覆う。
好きな人が自分と共にいて幸せと感じでくれている。自分を好きと言ってくれる。そんな幸福、どこを探したってそうそう見つからない。
嬉しい。俺だってお前と過ごす今のこの一瞬一瞬がとても幸せだ。
俺もお前が好きなんだ。だからーー!
そう、声を大にして言いたい。泣き叫んでもいいから。言ってやりたい。
けど、それを伝えられない。言えない。言ってはいけない。
必死に言葉を飲み込んでるせいか、喉が痛い。どんなに辛くても、飲み込めと自分に言い聞かせる。
そこまでする事なのか? いいじゃないか、思いを伝えて、それで待ってもらえば。そう心の中でもう1人の自分が囁く。
だめなんだ。それは。これは、俺のわがまま。俺にはコバルトも母さん達も同じくらい大切だから。この思いを踏みにじりたくない。
「ごめん……」
「トール?」
「ごめん、ごめんなさい……」
「俺の気持ちは邪魔ということか?」
「っ!」
違うという言葉を無理矢理押し留める。
コバルトの目が怖くて見れない。体が震えているのが、よく分かる。
出来るなら、このまま突き放す言葉を言えばいい。そうすれば、俺は。
「……。トール、手をどけろ」
「……」
無理矢理顔を覆っていた手を外される。視線を合わせたくなくて、横を向こうとしたら、今度は顎を掴まれた。
「俺の気持ちは、お前にとって邪魔か?」
「……」
真っ直ぐな瞳で見られると、隠せなくなる。溢れそうになる。
「言え、トール。お前はどう思ってる」
「お、れは」
言うな。言うな。頭ではそう思うのに。
心が溢れて止まらない。
「せーーだ」
「ん?」
「幸せだ。コバルトの傍にいられるだけじゃなくて、こうやって、一緒に笑いあって。大切にされて……。元の世界に帰りたいって思いが、揺らぎそうになるくらい、お前の事が好きだ!」
「っ!」
「これを言ったら、帰れなくなるから、きっと、お前を待たせる事を俺自身が許せなくなるから、距離置こうと思って、俺は……!」
コバルトの目が驚いたように見開かれる。それに余計、涙が溢れた。
やっぱり、俺には気持ちを抑えることなんて、無理だった。
両想いなのに、こんなに辛いってなんなんだよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
145 / 241