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「 」
「だから、分かんないって」
なにかをコバルトは伝えたいんだろう。必死にパクパクと口を動かしてるが、その口からが聞こえてくるのは、草木の音ばかりでまったく分かんねぇ。
「……!」
「どうした?」
なにかを思い付いたのか、服を漁り出すコバルト。首を傾げていると、取り出したのは俺がいつも使ってるメモ型の魔石だ。
「おま、それ持ってきたのかよ」
言いながら、ほっと息を吐き出す。向こうの世界の文字なら俺も分かる。これさえあれば、俺とこいつの意思疎通は出来る筈だ。
やっぱり、文字は覚えておいて正解だったな。
そんな感じで俺が見守ってる中、羽根ペンを使ってコバルトが書いたのは。
『ここが、トールの世界か?』
思ったよりも、素朴な確認だった。
「そうだ。ここが俺の住んでた世界だぜ」
「……」
俺が落ちてたから直したのか、真新しくなっているフェンスにコバルトは近付いて、辺りを見回している。その瞳には、微かな驚愕が見え隠れしていた。
それはそうだよな。だって、向こうにはこんな高い建物が無かったし、硬い建物も、レンガが限界だ。それに、こんな整備された場所、早々ない。
今のコバルトは、過去の人間がいきなり未来に来たようなもんだろう。不安になるのは仕方ない。そもそも、この状態で既に順応している方が、凄い。
『お前の世界は凄いな』
「そうか?」
『幼稚な言葉だが、未知なる世界としか言えない』
「まぁ、そうなるよな。取り敢えず、下に降りようぜ。このまま朝を迎えたら、不審者になっちまう」
『分かった』
俺の先導で校舎の中を歩くコバルトだが、見慣れないものばかりで、きょろきょろしてる。まるで、小さい子供のようだ。それが、なんだか可愛くて、噴き出したら、ムスッとした顔で見られた後、コバルトは、何故か驚いたような表情を浮かべた。
「どうした?」
『触手が、使えない』
「は?」
かなり困惑してるのか、はっきりとコバルトの顔に不安が現れた。こんな未知なる世界で、言葉も通じないし、触手も使えない。頼りの俺もなんか透けてて触れられない。
こっちに戻ってきて数時間も経ってないが、コバルトの精神を不安定にさせる要素は揃い過ぎているほどだった。もしも、俺がコバルトの立場だったら、イラついて物にあたってただろう。
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