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③
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「コバルト、ちょっと寄りたい場所があんだけど、いいか?」
『どこだ?』
「こっち」
校舎を出た後、俺がコバルトを連れてったのは、植物園。母さんの影響もあるけど、元々植物は好きだったからな。ここの管理は俺がしていた。
鍵の隠し場所も変わってなくて、扉を開くと、様々な色の花々が朝日を待っているかのようにその花弁を閉じていた。
この手入れの行き届き方を見ると、俺がいなくなった後は、他の奴が引き継いでくれたんだろう。
『ここは?』
「植物園。元は俺が管理してたんだ。ほかの場所よりは落ち着くだろ」
「……」
「少し休んでいこうぜ」
『そう、だな』
ずるずると壁伝いにしゃがみ込んだコバルトは、なにかを言ったあと、動かなくなってしまった。覗き込んで見ると、軽い寝息を立てて寝ていた。
多分、脳がキャパオーバーを起こしたんだろう。ここならすぐに見つかることはねぇし、暫くそっとしておこう。
「俺は少し周りを見てくるか」
扉をすり抜けた俺は、辺りを見回して、違和感を覚えた。
「校舎、こんなに古かったか?」
さっきは暗くて上手くわかんなかったが、なんか俺が覚えてるよりも、年季が入ってるように見えるのは気のせいか?
何かおかしい。そう思って改めて辺りを見回そうとした瞬間。
「誰だ! そこにいるのは!」
「っ!」
強い光があたって、思わず手を顔の前に翳す。どうやら、懐中電灯を持った誰かが俺を見つけたらしい。
ちょっ、俺って幽霊だから、普通の人には見えないんじゃねぇのか!? もしも見えてるとしたら、この状況は非常にまずい。
どうやって切り抜けようかと、思考を巡らせていると、急に光が逸れた。いや、逸れたというよりは、相手が懐中電灯を取り落としたみたいだ。今のうちに逃げようと足を踏み出した瞬間。
「鉱、なのか?」
「え?」
久々に呼ばれた呼び名に、思わず振り返る。そこに居たのは、どこか見覚えのある男性。
「えっと、誰?」
「忘れたのかよ! 俺だよ! 山岸珊瑚だよ!」
「……。は?」
素っ頓狂な声が口から零れた。
目の前にいたのは、同級生の山岸ではなく。
大人になった、山岸だった。
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