アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
③
-
「で、おやっさんが認めてくれる料理人になればまた堂々と戻れると考えたお前のお父さんは、そのまま世界中を旅していたらしい。けど、お前がいなくなって、お母さんが倒れたと奥さんから連絡が入ってすっ飛んで帰ってきて、謝ったんだと。どうやら、その場面に俺達は出会したらしい」
「……」
「その後、お父さんのことをおやっさんが殴り倒して、奥さんは、ビンタして、お母さんは泣いて。まぁ、凄かったよ」
「……」
「そこから色々あって、おやっさんは無事お父さんを認めて、店を任せて今に至るって感じかな」
俺は何も言わなかった。いや、言えなかった。
なにかもかも、他人事のようだ。いや、実際他人事なのだろう。なにしろ、俺が向こうの世界に行ったあとの話なのだから。
だとしても、そうだとしても。
どれだけ自分は、彼らに置いていかれてるんだろうか。
「……もう、ここは、俺知ってる場所じゃねぇんだな」
呟いた瞬間、母さんやおやっさんを見るのが怖くなった。俺の知らない10年を歩いた2人は、もう俺の覚えている彼らじゃないんじゃないか……?
「ーーない」
「ん?」
「母さんと、おやっさんに、会いたく、ない」
「鉱、なにいって……」
「変わっちまう位なら、距離を感じるくらいなら、このまま俺知ってる過去のまま、会わねぇ方が良い」
あと1日。それで俺はこの世界には戻ってこれなくなる。それなら、過去の綺麗なまま、わざわざ上書きする必要なんてあるのか?
くそ、コバルトの為にしっかりするって決めたのに。もう、うじうじしねぇって思ったのに。こっちの世界に来てから、ネガティブ思考にしかならねぇ。
俺、どんだけ怖がりになってんだよ。情けねぇ、マジで情けねぇ。
異世界に行った頃の強気な俺はどこいったんだよ。
「鉱、俺ーー」
山岸がなにかを言おうとした瞬間、タイミングがいいのか、悪いのか、奥さんが料理を持ってきてくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
187 / 241