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そして、とうとうその時間はやってきた。今俺達は高校の屋上にいる。ここで、コバルトの持っている鈴を鳴らせば、俺達は帰ることが出来るらしい。
目の前には、おやっさん、奥さん、母さん、父さん、山岸。
きっともう会えない、大切な大切な人達。後悔のないように、いっぱい話して、いっぱい色んな所に行った。
けど、まだまだ足りないと思ってしまうのは当たり前だ。こんなにも別れが辛いことも、きっとこの先ないだろうしな。
俺は、一人一人に向き合う。最後の別れを言う為にーー。
「山岸、色々とありがとな。最後に通訳頼んだ」
「おうよ」
「奥さん、おやっさんと一緒に長生きしてください」
「透琉ちゃんも、元気でね」
「父さん、母さんと幸せに」
「お前も、達者でな」
「おやっさん。今までお世話になりました。おやっさんに習ったこと、絶対に忘れねぇ」
「ふん……。体には気を付けろよ。透琉」
「母さん……。今までありがとう、愛してる」
「透琉っ……透琉!! 母さんもあなたのこと、ずっとずっと愛してるわ!」
ーーどんなに離れてても、もう二度と会えなくても。決して忘れない。そういって、母さんはコバルトの手を借りて、俺の頬に触れる。
「私の元に生まれてきてくれてありがとう。私の可愛い透琉」
「っ!!」
涙を溢れさせる母さんの姿が不意に歪む。皆には見えなくても、笑顔で別れようと思ってたのに、これじゃ台無しじゃねぇかよ。
ほんと、様にならないな。
「コバルト、行こう」
『もう、いいのか?』
「これ以上、ここにいたら、離れられなくなっちまう」
『……分かった』
コバルトが鈴を鳴らす。澄んだ様な、どこか悲しい音。それが反響し、空間に波紋を作る。
直後、俺の視界が徐々にホワイトアウトしていく。見えなくなっていく皆。せめて、本当の最後の最後くらい。そう思い、必死に涙を拭い、俺は叫んだ!
「母さん! おやっさん! 奥さん! 父さん! 山岸! ありがとう!」
ーーさようなら!
刹那、完全に目の前が白に包まれた。
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