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知らない、なにも、
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車から見た景色はとても綺麗だった。
たまにはドライブも楽しいのかもしれない
紫幹翠葉に木々の間から木漏れ日がさす
そんなところを見ていると今までの気疲れも
スーッとなくなった気がした。
だが、そんな事に癒されている場合ではない
車に乗りこんだことはいいのだ、
出かけることも事前に言われていた
だがどうだろう、目的地や、計画を一切していない
どこに行くかもわからない今素直な気持ちで景色を楽しむことが出来ない
大体なんだ。言えない場所って
車走らせてから20分ほどたっだろうか
車が渋滞することもなく、スムーズに森に入った
まず森に入る時点で市外なのは確定なのだが
全く先が読めない。
「どこ行くの」
「んー、」
適当に返事をされて何も返ってこなかった
なんだろう、軽くあしらわれて
心底不快な気分だ、
「俺に言えないような場所ってなに」
「…彼方の親はいつからいないの?」
「は、?質問に答えろよ…んー…母親は5歳くらいで父親は11の時かな」
やはりどこへ行くかは答えてくれる様子もなく
いきなり話題を振られて戸惑いはしたが
今この状況で答えないと今後が気まづくなるから
なんて理由で質問に応えた
そうか、とそれだけこぼした先生は
俺の手の上にそっと手を置いた
丁度トンネルに入っていきほの暗く
淡いオレンジが車内に差し込んだ
暗いからか少し胸が高鳴ると、
彼方自身もぎゅっと強く握り返した
我ながら正しい判断ではなかったとは思う
流石に恥ずかしい、でもその時はなんだか
その手から離れたくないとさえ感じた気がする
でもなぜ今更そんなことを聞くのか
疑問に思う。
「今はの保護者は一応親族の方だろ?」
「まぁ、一応な。でも家と金だけ置いて家にはよってもこないし、金もお小遣い程度で食ってけないから自分で生活費は賄ってる」
「バイトしてんの?」
「あー、うん、土木系の仕事ね?知り合いがいて、働かせてくれてる」
なんだか質問攻めしてくる先生に戸惑いながらも
会話が途切れないように言葉を考えながらはなした
うーん、人の顔をうかがいながら言葉選んだ…?
と言うべきだろう
「なんも知らない」
「そりゃあ言ってなかったし」
「なんもわからない」
力強く握った手は、白く跡が残るほどだ
先生は知りたいと言っているが
先生こそ、ほとんど自分のこと語らないではないか
むしろこちらのせりふなのではないだろうか?
トンネルを抜けて真っ白な光がさし、
薄暗いところから出たからか目がくらむほど眩しく感じた
なんもわからない、俺だってそうだ
今後どうなっていくのか、どんな風に生活するのか
誰かを求めて生きるのか、先生と離れまた喧嘩の生活に戻るのか、俺には何も目処がたってない。
何がいいのかわからない
長いトンネルから出た後は目がくらんで
何も見えないかもしれない
自分を見ているような気がして腹が立った
「知らない…」
「確かに俺も言ってはないけど」
「だって知りたいし」
相手が好きな人なら
尚更いろんなことを聞きたくなるもんだ
先生はどうやって生きて、どうやって甘えてたんだろう
何が起きて、何が辛かったのだろう
そんな彼方のことを無視するように
紫幹翠葉に広がる森は続き陽の光がキラキラして
光が溢れかえって青く見えた
思わず綺麗、と言ってしまうほどに
「じゃあ彼方に、少しだけ俺の話をするからしっかり聞いててね」
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