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1話「降りた」
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気がついたときには、
プシュー
と。
落ち着いた様な、電車のドアの閉まる音。
それから微かに、電車の中にいる奴らの「おい!」「何降りてんだよお前ら!」という笑い声。
それらは動き出した車両の音にかき消され、彼らはぐんぐんと遠くなって消えて行った。
ただ、
「・・・」
「・・・」
互いに盛大に目を見開いて。俺とソイツは見つめ合っていた。
掴んだ手から伝わって来る冷たさ。低血圧そうに見えるけど、それと関係あるのかなとか、どうでも良いことを繰り返し考えた5秒間。
首に撒いたマフラーは、今年になって幼馴染みがくれた誕生日プレゼントで。
俺は寒くはなかったが、この冷たい手をした奴はどうなんだろうか。
「・・ご、ごめん」
握った手を放せていない。
「い、いや、俺も・・ええと、何と言いますか」
あちらも同じようにうろたえていた。
降りたこともない駅で2人。
固まっているのは上り線のホーム。
駅名の書かれた看板の前で、困った顔をして見つめ合うことになった。
そうなった訳から。
とりあえず、お話ししよう。
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