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12話「話し合った」
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初めて話した日から2週間。
この間志織に千田の好きな人を聞いておけと言われてから2日後。
そのことをすっかり忘れたまま過ごしていた。
というのも、周りに何時も友達がいるから聞きそびれることが多かった。
だが今は違う。
「・・・」
「・・・」
今
俺と
千田と
2人っきりだ・・・!!!
昨日の昼休み。
何の気なしに、いつも1人でどこに行っているのかと聞いた。
『保健室とか、屋上とか・・・あと、図書室とか美術室とか』
その答えに
『屋上!?屋上って空いてんの!?』
そんな反応を示したせいか。
気を遣ってくれたのかなんなのか、千田はその次の日、つまり今日。
屋上に俺を連れて来てくれた。
「こ・・ここって、入っていいの?」
ぎこちなく会話開始。
「え?ああ・・俺が2年のときは、よく入ってたんだけど」
「そうなの?へえ・・鍵とかって、」
「俺が2年の時、仲良くしてた3年の先輩たちが壊した」
「ええ!?」
「って言ってもほとんど壊れてたから。無理矢理こじあけたら、こう、ポロッと」
「あ、ああ・・そういうもん」
2人して屋上の入口の裏に回って。そこの日陰に座った。
ぶわりぶわりと吹いて来る風のせいで、髪が乱れる。
色んな匂い運ばれて来るのが、スン、と息を吸うだけでよく分かった。
その中にまた、
(ぁ・・・)
千田の匂いがあるのに気づく。
なんか、男のくせに妙にいい匂いだ。
甘いと言うか、そういう感じの。
シャンプーか、ワックス、か・・・
「千田ってさあ、」
「んー?」
あれ?
気がついたときには自然と口が開いていた。
「彼女っているの?」
「・・・・」
どんな話題の切り替え方だ。
いきなりすぎるし唐突すぎるし。
驚いているのか、千田からの返答もない。俺はただ目の前の緑色の柵の向こうの青空に向かって、独り言みたいにそう聞いたから。
今、千田がどんな顔しているかなんて分からなかった。
「いない」
「?」
千田にしてはちょっと低くて、それでいて、冷めた様な声だった。
淡白と言うか。
なんて言うのかな。
「そっかー」
「んー」
でもすぐに元に戻る。
「・・・宮崎も、」
「え?」
「そういう話し、するんだ」
ワントーン低いその台詞に、肝が冷えたと言うか。
息がし辛くなった。
謝る。
いや、そうじゃなくて、訳をちゃんと・・・
「ごめん」
千田の方を向いて。
俺は静かな声でそう言った。
対して千田は、さっきの俺のように。目の前の青空を見ているようだった。
「・・いいよ」
こっちを見てくれない。
「ごめん」
何故か必死になってきた。
「いいって」
「千田」
「ん?」
やっと、視線がこちらを向いた。
「ごめん」
真剣な声で言った。
「いや、あの・・みや「聞かれて・・」え?」
「千田って彼女いるのかとか、そういうの、聞かれて、答えられなくて・・女子に。知らないっつったら、聞いてこいって・・ごめん。何か、あの、」
頭がうまく回らない。
舌も絡んで喋れない。
違う。
違うんだよ、お前を怒らせたいんじゃなくて。
そうじゃなくて、
そうじゃなくて、
違くて、
(うまく、喋れない・・!)
弁解とか、そういうとき。たまにこうして喋れなくなる。
何が言いたいのか分からなくなって来て。戸惑って、泣きそうになって。
ああ、頼むから。
話しを、
「宮崎」
「っ・・」
ぺちぺちと、軽く。
頬を叩かれた。
「へっ・・!?」
「お前焦り過ぎ」
「あ・・・あ、え・・?」
パンク寸前の頭が、意識が。
フッと、戻ってくる様な感覚だった。
近づいて来た千田が俺の頬に触れていて。
その冷たさで、目が冷めた様な。
「俺に彼女がいないかって、女子に聞かれたってーわけ?」
「そ・・そうそう!それだ!それ言いたかったやつ!」
「お前・・あはははは!超ウケる。大丈夫?ちょっと落ち着いて話せよ!」
パッと笑った千田の笑顔は不意打ちみたいなそれで。
ドギッと心臓が嫌な感覚で鳴いた。
おかしいな。
随分とおかしい。
最近の、ひどいくらいの動悸はどういうことだ。
(まさか病気・・)
「あーあ・・なんだよ、頼まれたって事か」
「んー、そう、そうなんだけど。何かごめんな。えっと、」
「俺さー、」
「?」
「ごめんなー。そういう話苦手でさー。たまに聞いてると嫌になって逃げ出すくらい嫌いでさー」
「あ、」
「だからー、まあ。これそのまんま、聞いて来た子に伝えといて」
「・・ん」
「聞かれるのも、聞くのも嫌だって。彼女いないし、欲しくないって、言っといて」
「うん、あの、」
「宮崎」
「・・・」
「お前悪い訳じゃないんだから、そんな顔すんなよマジ」
ニッと笑われた。
あーあ。その笑い方も好きだなあ。
ほんと、最近の癒しっつったら、千田の笑顔だなあ。
「・・俺も苦手」
「え?」
だから思わず、そう言った。
「何か・・むずがゆくてさー。だから、あんま、俺もしない。聞いて来た女子に2年のとき散々そういう話に付き合わされたんだけど無理だった」
「へえ。なんか、意外」
「んー・・救馬とかはノリノリでそういう会話するんだけどさ。俺は無理だわ」
寄りかかっていた壁から背中をずらし、痛くなって来た肩甲骨のあたりに手を伸ばす。手は届くがどうにもうまく摩れない。そのまま、背中を少し離して座ることにした。
「・・そっか」
今度はふんわりと笑う。
ドクドクと、心臓がうるさい。
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