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18話「焦った」
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自分がそう認めてしまうと。
確信してしまうと。
いつも以上に、俺の目はアイツを追って。
いつも以上に、求めるみたいに。
触れたくて。
一緒にいようと足掻き始める。
「・・・」
「見過ぎだっつの」
「いてッ!」
食い入るように。
翌日の昼休み、食堂にて。俺はずっと千田を目で追っていて。
それがバレて、隣に座っていた沢野に頭を叩かれた。
早めに来た俺と宇田っちはもう既にテーブルの上に自分の食料を乗せている。千田よりかは早く来た沢野も同じく。
千田と救馬と本原は遅く来たため、今やっと買った食券を食堂のおばちゃんに見せたところだった。
「お前だって本原みてんじゃねえかよ」
「俺はいいの。本原がこっち見るから見返してやってるだけ」
宇田っちがすぐそこの席にいる部活の後輩(宇田っちは剣道部)に話し掛けているのをいいことに、俺たちはコソコソと体を寄せ合って話し合う。
「本原が?沢野を?見る?」
「そ。アイツ告白したその日から超俺のこと意識してんの。可愛いよねー」
「おお・・・」
すげえな。
すごいというか、何と言うか。
沢野は実に堂々としている。フラれたら、とか。そういうマイナス思考なところが微塵も感じられない。
ただのんびり。
本当にのんびりと、本原の返事を待ってあげているらしい。
「目ぇ合うたびに顔真っ赤にしちゃってくそ可愛い・・あれもう襲ってって言ってんのかな」
「待て待て待て」
いや、思い込みが激しい危ない奴なだけなのかもしれない・・・。
3人がトレーにそれぞれの注文したものを乗せて、フラフラとこっちに帰って来る。
救馬は問題児なくせに明るい性格と人見知りしないことから友達が多くて、こっちのテーブルにたどり着くまでに数人に声をかけられていた。
あっちへフラフラこっちへフラフラ。忙しいやつ。
そうして。
近づいて来た3人の中で当然のように、俺は隣の席を千田の為に空ける。
「千田こっち」
「え?おー、ありがと」
「何で最近千田っちばっかミヤの隣?俺もミヤの隣がいーい!!」
気色悪い声で救馬が叫ぶものだから、全員の動きが止まった。
「何コイツ、きも」
「おえ」
「救馬・・・」
「何で皆哀れむんだよ!!」
白々しい視線を送れば喜んで泣きまねをし始めたので、とりあえず全員席についていただきます、と言った。
当然のごとく自然な動作で隣に座った千田を、俺はチラリと見て。それから嬉しくてズルズルとラーメンをすする。
(また2人で遊びたいなぁ)
ぼんやりとそんなことを考えた。
「・・・・」
「どした?」
「え?」
考えていたらボーッとしていたらしい。
麺を持たせた箸をそのまま口元で止めていると、隣から千田がコソッと声をかけてきた。
すぐ近くで声がして、驚いて。
バッとそちらを向いた瞬間に、今度はすぐそこに千田の顔があって。
「わ、わっ!?」
「ちょ、宮崎!」
あまりの近さに驚いて焦って。
ガッと沢野に縋り付くようにして抱きついていた。
「どうした!?」
千田が焦ったように身を引いて、俺と自分の間に何かいるのかとキョロキョロしている。
その必死な姿すら可愛くて。
だが尋常じゃない驚き方を見せてしまった俺は恥ずかしくて。
そして、つい抱きついてしまった千田とは反対隣に座っていた沢野の口から漏れて来る低いうなり声に心底謝りたくなった。
「ぁ、あ・・ごめ、千田、あの」
「は???な??せ????」
「ごめんって沢野!怒るなよ!あ、千田、ほんとごめん。何でも無いから!」
ギュイギュイと俺を千田の方に押し返して来る沢野。
千田は千田で俺と沢野を交互に見ながら唖然としている。
ああ、本当に申し訳ない。
ただ俺は、千田の綺麗な顔が近くにあったからびっくりしただけなんだけど。
それを、張本人に言える筈も無くて。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。ちょっと・・、あの、ボーッとしてて、変になって・・!」
どんな言い訳をしているんだか。
苦し紛れにそう言い終わると、ぐるんと体勢をかえて前を向く。
伸びて来たラーメンを食べきらねば。
今はそれに集中しようと、箸を持ち直した。
「そういえばさ、宮崎」
「え?」
やっと集中しようと思った矢先、スス、と肩を俺の方に寄せて千田が話し掛けて来る。
「いつ家来る?」
「え!?・・い、行っていいの?」
まさかの誘い。
「いいよ。っつうか、お前が来れるようにって部屋片付けたのに」
「え、え!?ほんと!?行きたい!」
「おいでおいで。いつ空いてる?」
「や、あの、俺いつでも暇だから」
「そうなの?俺は、今日明日かぁ・・来週の水木か、その辺なら平気」
隣にいる千田はうどんを食べながらニコニコと話してくれる。
俺も応えるみたいに笑顔になっていた。
千田の笑顔は好きだ。可愛いし、綺麗だし・・こっちを向いて笑ってくれるのが何だかすごい嬉しいし。
「ん?・・じゃあ今日」
箸を咥えながら言った。
冗談半分で。
「いいよ」
「え?マジで?」
即答された。
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