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30話「想像した」
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ものすごく口に咥えられたストローを気にしながら部屋に戻り、救馬のいる方のテーブルにコップを置く。
自分のコップには千田と同じオレンジジュースを半分より少し上あたりまで入れて来た。
(ああ・・・ほんとに、心臓に悪いっていうか)
もう、千田と千田の唇とキスのことしか考えられなくなっていた。
(・・・)
それから、告白について。
頭の片隅にあるそれを引っ張りだして来て、皆が歌うのを聞きながら真剣に考えることにした。
もしも、俺が千田に告白したら、どうなるんだろう。
チラリと隣を見て、それから歌っている沢野に視線を投げた。
もしも、付き合ってくれと言って、はいと言われたら。OKしてもらえたら。
そりゃあ喜んで付き合って、・・付き合って、どうするんだろうか。一緒に受験を乗り越えて、大学に行って、それで・・?
男同士の先に、結婚と言う文字はまず無いだろう。いや、一緒にいさせてもらえるなら、俺は本当にそれだけでいいのだが。
でもそうなったら、うちのなっちゃんや父さんは気にしないとしても、千田のご両親は?
やっぱり孫の顔を見たいとか、思うんじゃないだろうか。だって、お兄さんが亡くなった今、子どもは千田1人しかいないんだから。
「・・・」
じゃあ断られたら?
むしろ断られる可能性の方が大きいんだ。断られたら、俺はどうする?
キョロキョロと、歌っている沢野と本原を交互に見る。
あの2人は、沢野が告白して本原が沢野をフッたのに、今も一緒にいる。
友達の絆に変なヒビは入っていそうには見えない。沢野からはあれから話は聞いていないし、本原が今沢野のことをどう思っているかなんて分からないけれど、避けたりとか逃げたりとか、突き放したりとかもしていない。
2人でよく話しているし、別にそこに不自然さは感じないし。
「・・・」
ぶくぶくぶくぶく、と。ストローに空気を送り込み、コップの中のオレンジジュースに泡をたてる。
今の俺と千田の感じを考えると、うーん。別に、告白してフラれても、沢野と本原みたいに以前と何ら変わりなくいそうに思えるんだけどなぁ。
友達としては気に入ってくれているみたいだし、フラれても俺は友達でいたい。千田がどう思うかは分からないけれど、フラれても、「じゃあ、今まで通り友達でいてもいい?」って、俺はそう聞くだろう。多分千田は断らない。多分だけど。
そうなったら、
もし千田が俺を避けても、俺は少しずつでもいいから関係を元に戻すように努力するだろう。こんなに好きなんだから、恋人じゃなくても友達でいたいと思うのは普通な筈だ。せめて、どんな形でも良いから、縁を切らずに傍にいたいと思う筈だ。
それはきっと、千田は拒絶しないと思う。
何故だかそこだけは、自信が持てた。
「・・・」
でも、むしろもしも付き合ったら。
俺は多分、上手くいってしまったときの方が分からない。
付き合ったら、どうなるんだろう。
(・・経験者に聞くのが一番か)
そう思うと手が動いて。
テーブルの上に置いてあったケータイに伸び、それを取って電源を押す。
さっさとメールを打ってから送信ボタンを押すまでに、そんなに時間はかからなかった。
[なっちゃん、今日、早く帰って来て]
なっちゃんさえ帰ってくれば、父さんも帰って来てくれるだろう。
一番聞きやすい経験者は、すぐそこにいた。
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