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33話「思いついた」
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アタック、となると。
どういうことをしたらいいんだろうか。
「・・・・」
「み、宮崎?怖いよ?」
昼休みの食堂。
何をしたら良いかも分からず、とりあえず隣にいる千田をジッと見ていた、が。
効果はなさそうだ。
怖いって言われたし。
考えてみたら、彼女ができたときだって目立ったアタックなんてしたことがなかった。たまーにメールして、たまーに一緒に出かけて。
何の気なしにそうしていたら好きになっていて。それはあちらもで。なんかもう、途中から付き合っている様なそんな感じになっていたから、これは確実だろうと告白した。
だから、ようは、
(俺はアタックというものをしたことがない)
どうやったらいいんだ。
大体、相手は男だ。それこそアタックの仕方なんて分からないだろ。俺は千田の笑顔見ればドキドキするし、それで好きになったけど、でも、
(俺の笑顔見た所で千田がクラクラくるなんて思えない・・!!)
困った。
なんだこれは。
絶望的じゃないか。
食堂の机につきながら、頭を抱えそうになる。
隣にはうどんをすすりはじめる千田の姿。
これ以上見ていたら迷惑か。
そう思って視線を外し、目の前の救馬をじーっと見ることにした。
「何だよミヤ」
「別に」
「え、なになに?何でそんな見てくんの?惚れちゃった?まさか惚れちゃった?」
うざったい。
色んなポーズをとってふざけはじめる救馬を冷たい目で見ながら溜息をつく。
「救馬、それ食わないならちょうだい」
「え?あ、だめだめだめ!!食うから!!」
嫌気がさしてテーブルの上に置いてあった救馬の買ったパンを横取りしようと手を伸ばす。
ギリギリのところで救馬に奪い返されたが。
「それでやけに千田ちゃん見てたわけ、今日は」
沢野に昨日今日の出来事を話したのは、その日の放課後だった。
教室に残って、今日は遊ぶ約束も何もしていないし、千田は用事があると言ってさっさと帰ってしまったから沢野と2人で一緒にいた。
一番窓側の一番後ろ。俺の席はそこで、沢野はその前の席に座って。
俺の机に2人して肘をつきながら、窓の外を見つつ会話を続ける。
「っそ。アタックて何したらいいか分からんし」
さっき購買に行って買って来たプリンを、むぐむぐと口の中で崩す。
「アタックなあ」
「本原にはどうやった?」
「え?・・いや、告白してから、返事はゆっくりでいいって言ってアタックした」
「その前は?」
「何も。遊びに行くくらい」
「え・・」
「だから何もしてないよ」
「そうなの!?」
眉間に皺を寄せた俺を、同じ様な顔で沢野が見上げる。
「だったら何だよ」
「・・そ、それが一番いいかもしれない」
「え?」
「いや考えてみろよ。絶対千田は俺のこと意識して無いじゃん?っつうか、そっちの気がなかったら意識するわけねえじゃん。だったら告白して、返事は一ヶ月後に聞かしてとか言って、それまでアタックし続けた方がいいかもしれない」
「・・ああ、そういうことか」
「え、お前もそう思ってやったんじゃないの?」
「俺は・・成り行き」
成り行きって・・・。
沢野は呆れるくらいにその場しのぎとか、思いつきな行動が多い。
突発的な奴だなあと思うことが多いが、本原に対してもそうだったらしい。
開けておいた窓からふわふわと風が入って来る。
それを顔に受けつつ、ちょっと良い事思いついた、と感じてウキウキし始めた。
「やっぱ、ちゃんと言おう」
「んー」
「それで、考えてもらう」
「まあ、それが一番じゃね?俺みたいに一週間とかそこらじゃなくて、もっとゆっくり答え待った方がいい」
「うん」
沢野は何だか少し元気が無い。っというのも多分、先ほどこの窓から本原と1年の紗季ちゃんが一緒に帰っているところを見たからだろう。
「・・がんばれ、大ちゃん」
元気無く、それでも笑顔で沢野がそう言った。
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