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34話「誘った」
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「あ・・千田?」
《んー。どしたよ》
千田に電話をしたのはそのすぐ後だった。
「あんさ、えっと・・い、今ドコにいる?」
《は?》
電話の向こうからはまさにキョトンとしたような声。目をまん丸くして驚いているアイツが想像できる様な感じだった。
《え・・と、病院》
「病院?」
《んー、ちょっと、用事で》
「ごめん、あの・・どこの?」
《え?・・ああ、学校から、あんま遠くない所の。何で?》
あまりにも俺の会話は不自然だったのか。ちょっと困った様な声。
沢野はまだ帰っていなくて、電話している俺を見たり、窓の外を見たりしている。
緊張したまま電話したせいか、心臓はうるさいし、自分が今何を喋っているのかよくわからなくなってきた。加えて、手汗が酷くてケータイを落としそうになる。
この、恥ずかしい感じ。
覚えてる。前に付き合った子に告白するときも、こういう感じだった。
「あ・・あのさあ!!」
《え?あ、はい》
「その用事、いつ終わる?これから遊ばない!?」
もう何がしたいのかわからなくなってきて。
とりあえず声を大きくして言う。
《これから?え・・いや・・別に、いつ帰ってもいいやつだから、平気だけど》
「じゃあ!!あの・・あの、前に、」
《うん》
「2人で一緒に降りた駅、覚えてる?」
《うん》
「そこに、来て・・何時でもいいや。とりあえず俺、そこにいるから」
《・・うん」
多分、俺が何をしようとしているのか、千田は本当に分かっていない。
声はキョトンとしたままで。俺は焦ったままで。
とにかくそれだけ言うと、「じゃあ待ってる!!」と言って電話を切った。
ケータイが汗でツルツルと滑る。ズボンでそれを拭いてから、ついでに手も拭いて。
はあ、と大きく息を吐く。
緊張しきって熱くなった体に、後ろからサラリと涼しいくらいの風があたった。
「・・い、行って、くる」
「お前大丈夫?」
「だ、大丈夫」
「うわあ・・・」
沢野に疑いの視線を向けられた。
「絶対大丈夫じゃないだろ」
「じ、人生で始めたなんだぜ!?」
「男にはだろ。女にしたことあんだろ。同じだ同じ」
椅子にふんぞり返った沢野が面倒そうに言ってくる。
気になるんだけど、コイツは・・・女の子の経験あるのだろうか。
「ま!あ!!とりあえず頑張れよ!」
「んー・・なあ、」
「ん?」
椅子から沢野が立ち上がり、俺はそれを見上げる。
「お前・・本原のこと」
そこまで言うと、沢野はまた少し怪訝な顔をした。
「・・諦めない」
「え」
そしてニッと笑って来た。
「諦めないことにした」
「おお」
「だって見た!?さっきの見た!?」
バンッ!!!と、机に両手をつく。
俺はその音にびっくりして少し身を引いたのだが、沢野が気がついていないのか頭に血が上っているのか、こっちに顔をグンと近づけて来る。
「やっぱダメだって!!だってぜってー俺の方がいいよ!?俺の方が本原の隣似合ってるよ!?」
コイツのこの自信はどこから来るんだ。
まあでも、元気に戻ったみたいだから、何となくホッとした。
「あー、うん。そうだね」
「何で急に冷たくすんだよ!」
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