アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
35話「座った」
-
ポツン、と1人。
初めて千田と遊んだ駅に降りた。
久々な感じがする。
あれからもう一ヶ月くらいは経ったんだろうか。
見回す限り目立った明かりは無くて、あるとしても住宅街のそれと電柱の明かりと。あと、寂れたスナックとか、ガラス張りのデカい窓のある塾とか。
そう言ったものの、明かりで。
都会の華やかでうるさいくらいの、バラバラの明かりはない。
「・・・」
ひやっとするベンチに座る。
温かくなり始めた時期の風は、本当に少し涼しいくらいで気持ち良い。
ブレザーのボタンを外して前を開け、それからネクタイを少し緩めた。
「ハア・・」
緊張する。
ギトギトと汗をかく感覚もする。
息がし辛い。
ああ、俺、千田に告白するんだ。
いやでも、コレくらいしないと多分、絶対。
千田は俺の方を向いてくれない。
暗くなった空を見上げた。
星がチカチカと光っていて綺麗だ。
ふぅ、と息を吐く。もう寒い時見たいに白く染まったりはしなかった。
ゴトンゴトン、と音がし始めて、一瞬ぐらりと緊張が全身に回る。
上りの電車だった。
(千田って・・どっちのに乗ってくるんだろう)
それすら聞かなかった。
ただ、6時26分着だと連絡が入った。今が20分だから、多分下り電車に乗ってくるんだろう。病院って、言っていたけど、何の病院・・?
(怪我・・あ、誰かの見舞いとか)
ぼんやり、ぼんやり。なんとなしに上を見上げて考える。
「・・・好き、だ」
あまり人の降りない駅。上り電車から降りたのは数人で、話し声もなくすぐにホームから人はいなくなっていた。
「千田が・・好き、です」
練習、とばかりに呟く。
誰かに聞かれていたら、嫌だなあ。
それでも、遠くで音がしたり、駅前のコンビニのドアが開くたびに中から店員の「いらっしゃいませ」という声が聞こえてくるくらいだった。
下り線のこのホームには、誰もいない。
考えてみたら、千田と降りたのはあっち。上り線のホームだ。
「・・・」
また、ゴトンゴトンと音がし始めた。
「っ・・あー、やべえビビってるわ」
その音にが近づくたびに、ドキンドキンと心臓がなる。
抜けて行った緊張がまた、忍び寄って来て。
1回頭を抱えて、パン!と頬を叩いて気合いを入れた。
大丈夫。
大丈夫だから、落ちつけよ。
死ぬ訳じゃねえんだから。
「はあ・・あー、もう、大丈夫だから、」
緊張する。
緊張する。
すごい、心臓、うるさいし。
泣きそうになって来たし、ああ、もう。なんでこう、女々しいんだよ。
なんでこう、緊張しいなんだよ。
ばくばくばくばく早くなる。鼓動も、血流も、うるさくて。鬱陶しくて。
帯びてきた熱を振り払ってくれようと、風がヒュウヒュウと吹いたのに。
余計に余計に熱くなるようで、電車はすぐそこまできていて。
ブレザーから取り出した携帯を覗けば、25分の文字。
「っぁ、」
この電車だ。
と思った瞬間、目の前でブレーキをかけ始めたそれは、ゆっくり、ゆっくり。
ぎこちない音を立てながら、やっとの思いで停車した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 72