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38話「謝った」
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「ごめん」
重たく響く。
胸に、すごい衝撃がはしった。
痛くて、苦しくて、息ができなくて。
俺はすっと涙が止まる。
「・・好き、だ」
諦めきれないと思うなんて、想像していなかった。
「好きだ・・好きだ・・好きだ!!」
叫ぶなんて思っていなかった。
「ごめん・・その気持ちが、俺には分からない」
俯いたまま、千田が言った。
残酷すぎる言葉が、ドンドン胸に刺さって来る。そして、代わりに。刺された胸からは、ドロドロのしつこくて黒い感情が、どばどばと溢れて来て。
汚くて。
醜くて。
自分が嫌になった。
「俺は、好きとか、愛してるとか、知らない。分からない」
「・・・」
喉を締め上げられる。
苦しくてどうしようもなくて、胸元にある千田の手首を、痛いくらいの力で掴んだ。
「っ、」
「・・せ、て」
グルグルグルグル。
ああ、また、目が回りそうだ。
俺は今、何を言おうとしてる?
頭を熱を覚ましてくれる様な風が、サッと通り過ぎて行った。
「キス、させて・・・ぁ、諦める、から」
バッと千田が顔を上げた。
泣きはらした顔だった。
見下ろしている俺は、どんな表情をしているんだろう。
「ぁ・・・」
「・・ご、ごめん」
何を言ったんだ、俺は、今。
慌てて、手を離して。慌てて、一歩後ずさる。
「ごめん、ごめん何でも無い!何でもない今の忘れて!!」
ばっばっと胸の前で手を振って、誤摩化すように必死に笑う。
「・・宮崎、」
「何でもねえから!ほんとに!!ごめんな!!」
恥ずかしい。顔が熱い。
何言ってんだ、俺。
なんてこと言ったんだよ。
「すれば、いい・・?」
「え・・」
時間が止まったみたいに思えた。
ぎゅるり。
こっちを見上げて来る千田の、その浅い茶色の目が揺れた。
「・・ぁ、」
一歩。
こちらに踏み込んで来て。
「い、いい。違う、」
一歩。
俺がまた後ずさる。
「宮崎」
一歩。
また近づかれて、避けようとして持ち上げた腕を掴まれる。
「千田、やめろ。俺、ほんとにするよ?き、気持ち悪いだろ、だから」
「宮崎」
「いらないから!!」
謝罪のつもりだろう。
そんなキスいらない。したくない。
そんなに嫌そうな顔でされるキスは、
あの時の、女の子とした時みたいにされるキスは、
いらない
はず、なのに???
「ぁ、」
「宮崎」
見上げて来るその目が、辛そうに笑ったから。
大好きな笑顔が、一瞬でも見えたから。
抑えが利かなくなってしまったんだ。
「ごめん」
こんなの、したくないよ。
でも、大好きなお前に、好きだって伝えるキスはしたい。
次に引寄せたのは俺だった。
千田の頭の後ろに手を回して、グッとこちらに引く。
驚いた顔の千田と、最後に目があった。
「ごめん。好きだ」
左手は、千田の右の手首を掴んで。
俺はゆっくり目を閉じて。
「っ、」
何か言おうとした千田の、その驚く程柔らかい唇を塞いだ。
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