アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
39話「キスした」
-
無言で2人で電車に乗った。
何も言わずに、千田は視線を下げたまま、俺の最寄りよりも前の駅で降りて乗り換えに向かう。
ただ、その背中を見ていた。
「・・・」
何も言えない。
何も声をかけられない。
人ごみにまぎれて、角を曲がって。千田の背中は見えなくなった。
そうして、俺の乗っている電車のドアが閉まった。
『ん、宮崎、人来る、から』
『ごめん、』
収まらない熱が頭をおかしくしてきて。
そんなに力を入れている気はないのに、俺の手は千田の手首を締め上げていた。
唇は離さないまま、短くそう言って。もう一度、とキスをする。
『んっ、』
苦しそうな、嫌そうな声。
また、涙が出そうになった。
『もう、やめろ。ほんとに・・本当に、』
泣きながら言われたら、やめるしかなかった。
俺から数歩後ずさって離れる。
『・・・』
『・・・』
その後すぐに電車が来た。
『帰ろ・・』
それだけ言って、あとはもう喋らなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 72