アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
47話「会わなかった」
-
俺はどうなるんだろう。
沢野が前を向いた瞬間に、俺はそんな不安にかられた。
「空いてるしー!ミヤの隣に救馬入りまーす!」
「うざい。うるさい」
「冷たくすんなよー」
あれから、1時間目をサボって教室に戻った。
救馬には「ごめんトイレ行ってた」と誤摩化しきれないだろう連絡だけ入れておいて。
現在は昼休みの食堂にいる。
ちなみに、千田はいない。
「千田っちどこいったんかなー」
救馬が周りをキョロキョロ見回して言った。
「座れ、救馬」
低い声で宇田っちが言う。
今日は剣道部の朝練があったらしいから、それで不機嫌なんだろう。
宇田っちは剣道部だけど顧問の先生の指導が気に入らなくて大嫌いだから。それでよく主将なんてやってられる。
「大ちゃん食べないの?」
救馬とは逆の隣席に座っている沢野が、俺の顔を覗き込みながらそう言う。
先ほどの泣顔はどこへやら、いつも通りの笑い目の男がそこにいた。
「食べる食べる」
「・・お前大丈夫?」
「んー・・まあ、何とかする」
昨日の、あれから。
一度も喋っていない。
連絡も取り合っていない。
ここんとこ毎日のように皆で遊んだり、2人で出かけたりしていたから。
なんだか妙な感じがした。
(俺と千田っていう、2人の社会が壊れたみたいだ)
ぼんやりとそう思いつつ、うどんを口に運ぶ。
未練がましいことこの上ない。
千田のことを考えていたら、手が勝手にうどんの食券ボタンを押していた。
我ながら怖い。
(嫌われたんかな・・やっぱ)
あんなに泣かせた。
嫌がっていたのに、キスまでした。
「・・はあ」
気が重い。
話したいっていうべきか、沢野みたいに。
アイツは今日の放課後けりをつけるらしい。
俺は?
千田に話したいって言って・・それで?
何を話すの?
(何も無い・・好きってこと、言うしか)
それはもう十分言った。
千田も多分、理解してくれている。
いや、
(理解・・できない、か)
わからないのだから、無理だ。
理解なんてできないだろう。
そして俺にも、その感覚が分からないのだから。
ズルズルとラーメンよりは太い麺を吸い上げて、むぐむぐと噛む。
多めに入れた七味の香りがした。
(アセクシャル・・無性愛・・恋愛できない・・)
どうしようもない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 72