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53話「言ってほしかった」
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「宮崎、ごめん、放せ」
「千田、頼むから話し聞いて」
「放せってば!!」
こっちを見上げて来た目は、すごく悲しそうだった。
敵意とか、嫌悪とか、そういうものは感じない。
ただ悲しそうで、必死に放せと言って来る。千田の腕を掴んでいる俺の手を叩いたり、引っ張りして。
嫌がっている。
「・・・そ、そんなに、嫌いになった?」
だから、もう、我慢できなくなったと言うか。
そんな感じで。
バカみたいに、泣きそうな声で言った。
「ぇ・・?」
「そんなに、嫌いになった!?俺のこと・・友達でいるのも嫌か!?視界に入れるのも嫌!?」
こっちだって、必死なんだ。
グッと、掴んだのは千田の肩で。
また力を入れすぎていて、痛いかもしれなくて。だから心の中で謝った。
「み、みや、」
「嫌いなら嫌いって言えよ!いやならいやって!!そしたら、あ・・諦めるから!!せめて友達でいたいとか、思ったけど、お前がそこまで嫌なら、俺は」
「宮崎、」
「俺、諦めるから!!」
苦しいんだ。
こんなにも苦しんだ。
俺は本当に千田が好きだったんだ。
泣きそうになるのを必死に堪えながら、何で今までの恋とは違ってこんなに必死なんだろうかと冷静に頭の隅で考えていた。
いつもなら、別れても、フラれても、死にゃあしないで終わることなのに。
今は違う。この恋は違う。
それが何でなのかは分からないし、それをどうして理解できているのかなんて見当もつかない。
ただ、
この恋だけは、簡単に終わらせたくないんだ。
「だから!!・・イヤなら、そう言え!!」
「・・・」
「ちゃんと聞くから!!距離取るから、近づかないように、」
「お前のせいだッッ!!!」
「・・・ぇ?」
急に叫んだ千田の顔は、どうしてだろう。
焦った様な表情だった。
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