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57話「思い悩んでいた」
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見上げた空は真っ青で、気持ちがいいくらいに俺の手から遠い。
「・・・」
正直、まだ悩んでいた。
千田と仲直りだけはしたくてああ言ったけれど、それでも今、自分がどうすべきなのか分かった訳でも、見つけた訳でもなかった。
(落ちてきそう)
青空を見上げて溜息をつく。
千田と喋れるようになってから、2日が経とうとしていた。
昼休み。
1人になりたいだとか滅多に思いつかないことを考えて。
1人、千田と来たことのある屋上で息をする。
千田はあれから、また普通に話してくれるようになった。それでもたまに、本当にごくたまに、ギクシャクとした嫌な感覚がするのは分かっている。
互いに納得しきれていない。
そういう感じの、空気。雰囲気。
千田に触れにくい。
話し掛けにくい。
そんなのは嫌なのに、どうしたらいいかと考えるたびにますますどう接したらいいのか分からなくなっている。
いっぱいいっぱい。
お手上げ状態だ。
俺は、どうしたらいいのか。
「付き合うのは無理だし・・ってーかまず、両想いには絶対なれない・・」
でも、人間的に嫌われている訳でもない。
友達としては好きだと言ってくれた。
「・・あー」
人の性別は、病気ではない。
個性であって、その人間自身の人格。
否定はしないし、差別はしない。失望した訳でも何でも無い。
ただ、どうしても。この恋だけはと、泣きそうなんだ。
「好きだー、バカヤロー」
それもどうしようもないくらいに。
君の傍が心地よくなってしまったんだ。
「・・・」
申し訳ない。
誰も好きになれない自分が、申し訳ない。
けれど、誰かと・・宮崎とも。付き合うなんて考えると、気持ち悪くて仕方なくなる。
付き合ったらキスをする。抱きしめ合うし、手も繋ぐ。それ以上もある。
虫唾が走るんだ。
そういうことを考えるのが、いつから嫌いだったろう。いつから怯えるようになったんだろう。
昼休み。宮崎だけが来ない食堂で、皆の会話に混ざって溜息をついた。
こうして、一緒にいるだけじゃダメなのか。一緒に過ごして、笑って、それだけじゃダメなのか。
俺じゃ理解できない。宮崎の付き合うだとか、宮崎とキスをするだとか、そういうの。恋人と言うのが、多分演じられない。宮崎のことだから、無理矢理俺が付き合おうと言えば、「無理しているから嫌だ」とすぐに気がついてしまうだろう。
宮崎はいい奴で、何だか少し周りと違う。特別仲のいい友達と言う訳でもなかったのに、何だか・・・初めから、一緒にいて楽だった。言いたいことが言える。言いたいことをゆっくり聞いてくれるし、俺もアイツの言うことをゆっくり聞きたいと思えた。
キスだって、
周りの友達とふざけてしたら、口を拭くどころじゃなく多分トイレに駆け込んでいただろうに、アイツ相手にはそうならなかった。別に、いっか。そんな感じだった。
「・・はあ」
だから分からない。
どう接したらいいのか分からない。好きではない。でも、遠ざけたくはない。周りよりも宮崎に「大事な友達」と言ってもらえるなら、それはすごく嬉しい。
このモヤモヤとしたものは何だろう。
どうしたら、消えるんだろう。
消えるとしたら、その時俺とアイツはどういう関係になっているんだろう。
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