アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
67話「満足できなかった」
-
「・・千田、」
「ごめん・・宮崎の気持ち、わかんないくせに・・」
本当に死のうとしていたんだ。
俺なんかのために。
俺のことを思って、悩んで、苦しんで。
「来年・・俺も、検査受けたら・・きっと、本当に、アセクシャル・・だろうなぁ」
ボロボロボロボロ。
落ちる涙。
小刻みに震える力の入った手。
俺はそれを見下ろした。
「ごめんな、宮崎。好きになれなくて・・気持ちも、分からないで・・こんなん、」
「・・・」
「こんなん、好きに・・ならない方が、良かったよね」
「・・・」
「面倒で、理解できないだろうし・・さ、最低、だし」
何となく、その言葉にはイラッと来た。
「ふざけんな」
だから軽く。ぺしっと。
空いていた左手で、軽く千田の頬を叩いた。
「・・え?」
「俺が誰を好きになろうが勝手だろ。それに、俺は後悔してない」
「・・・」
「千田を好きになって・・ってーか、今も好きだけどさぁ・・ホントに、後悔はしてないよ!?そりゃあね!?そりゃあどうしたらいいんだろうとか、千田からしたら迷惑だよなーとか!!すげー悩んではいるよ!?今も!!でもな!?俺は好きならなきゃ良かったなんて思ってねーから!俺は、千田と出会って良かったし、友達になって、好きになって良かった!!!」
「っ・・」
「だから後悔してないし、そんなウジウジ自虐的なこと言ってんじゃねえよ!!」
ぺしぺし、と。
また軽く、何回か頬を叩く。
微かに掌が濡れた。
「・・・」
「来年だろ?!まだ1年あるんだろ!?」
「え、あ、うん」
検査ができるようになるまで。
まだ、時間はある。
「ならそんなに思い詰めんな。思い詰めて自分を苦しめんな!」
「ん・・うん」
「もし、」
頬を叩いていた手を、千田が重ねてくれた右手の上に乗せる。
「もし、千田が本当にアセクシャルでも、俺は千田を好きでいたい」
「ッ・・え」
「ち、千田が嫌がっても、好きでいると思う・・多分」
「お、おお・・?」
手にまで、汗かいてる。
「もし・・傍にいていいって、言ってくれるなら、俺はそれだけで、本当にいい。一緒にいさせてくれるなら、今まで見たいに一緒に遊んでくれて、一緒に笑ってくれるなら、それだけでいい」
「・・・」
「付き合ってとか、前みたいなことは言わない」
「・・でも、」
「でも、まあ!!それだけじゃあ!!流石に満足できないから!!」
「え?あ、う、うん・・?」
そりゃあ俺にだって、好きな人の一番になりたいとか。
本当だったら付き合いたいとか、あるわけですから。
握り合った手が、少しだけ歯がゆい感じがした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
67 / 72