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【序章】1
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【序章】
大学の図書館の、入り口近くの掲示板でそれを見つけた。アルバイト募集。文学好きな人を募集します。やることは簡単な雑務で、卒業生のお手伝い。
ちょうどバイトを探していたところだったので、応募してみた。詳しく聞けば、うちの大学を卒業した作家先生のお手伝い、とのこと。メインは書庫にある大量の本を整理してほしいらしい。給料は申し分ない。深夜のコンビニより時給がいい。時間も自由だ。
面接はなかったのだが、試験問題のようなものが送られてきた。ごりごりの文系である俺も、ちょっと難しいというか、きつい内容だった。やたらマニアック。駄目かなと思ったが、後日合格との電話がきた。
バイト初日。
スクーターをてろんてろん走らせながら目的地につく。閑静な住宅地の、やたらでっかい日本家屋。塀で囲まれ、門まである。見えないが、立派な庭があるらしいこともわかる。表札には【古城】とあった。
インターホンを鳴らすと、しばらく待つように言われた。のどかにヒヨドリの声を聞きながら突っ立っていると、やがて門が開いた。
「どうぞ」
と言ったその人は、杖を持っていた。儀礼的に微笑んだ顔は冷たい印象だった。ぎこちなく歩くその人の、後ろをゆっくりとついていき、家のなかに招かれた。
古城賢人(こじょうさかひと)というのが本名だと、はじめて知った。
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