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「祖父が生きてた頃はね。きちんと図書室があって、僕も少しは読んだかな。難しい本ばかりだったから、あまり読めるものはなかったんだけどね。親父は現実主義だから、嫌がってたけど」
「なに読んだんです?」
「思い出せない。海で冒険する話だった。僕はその話が大好きで、何度も読んだんだ」
ひだまりのあたたかな、畳の部屋で。それなのに潮の匂いを確かに感じた。海の青さを見た。共に旅する仲間たちの声を聞いた。
カモメの鳴き声。
波の音。
朝日の眩しさ。
「俺も読んでみたいです」
「ここにはないよ。僕があんまり本ばかり読むものだから、親父が捨てたんだ」
作家先生は微笑んではいるが、やはりどことなく冷たい印象がした。
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