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「ふざけんなよ」
ふいに離れた先生の、腕をつかんで振り向かせる。むかつくことに先生のほうが背が高いので、俺はつま先立ちをしなきゃいけなかった。
逃げらんないように襟元を引っ張ってベロチューかます。この人に俺のテクは通用するんだろうか?
自分からしたくせに頭がくらくらする。わけわかんない。まりあにしてるときとは全然違う。あれは楽しくて気持ちいい。これは苦しくて痛々しい。ただ重ねるだけがなんでこんなに熱いのかわからない。いろんな感情がわき出てくるくせに思考はまっさらだ。
なんかあんまり集中出来なくて、というか先生のほうが上手い気がして、焦る。やばい、逆転される。
「…………っ」
始めたときと同じように、乱暴に終わらせる。舌打ちして口を袖で拭ったら、何故か先生は口をおさえて笑った。
「………なんすか」
「ふふ、いや……かっこいいなあと思ってね」
嘘だ、そんなの。
でも先生はくすくすと笑い続けて、終わったと思ったらまた肩を震わせる。やがて腹を抱えてしゃがみこむまで。馬鹿にされているようで腹が立った。けれど、情けなさのほうが大きい。なんで俺、こんなにガキなんだろう。この人と対等だったら、もうちょっと理解しあえそうなのに。
「ここで女の人が死んだんだ」
汚れたハートを見つめながら、先生は言った。
「え、」
「昔の話だよ。痴情のもつれでね。まあそれが有名になって、部屋で心中する客が増えて、ここは潰れたわけだけど」
先に言えよ。
ぞっとする。べつに本気で幽霊やら呪いやらは信じていないが、気味が悪いものには極力触れたくない。
「……………どんな思いだろうね」
先生の問いに、俺は答えられない。まるで国語のテストだ。この主人公は、どんな気持ちだったと思いますか。15文字以上35文字以内で答えなさい。
死んだことがないのでわかりませんと答えたら、今度は漫才でも見たかのように、明るく笑った。
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