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「……生活に困らないぐらいには売れたからね、だからこんなこと言えるんだけどね。本当はもうこれ以上はないっていうのを書けたらお金なんて要らない……」
自分にとっての、最高の小説。それを書き終えたら、もうあとにはなにも残っていないくらいの。世間の評価もいらない。売れるかどうかなんて、どうでもいい。ただ文学の作品として、真っ直ぐに、疑いようのないもの。幾時代を経ようが、人の心を動かすもの。
「……それが出来たら、死んでもいい」
酔っていなければ、俺にこんな話はしなかったんだろう。先生にそんな想いがあるなんて、知らなかった。どんなジャンルにもさらっと入っていける。ネタの宝庫は尽きない。無節操だなんて批判もある。でも違う。先生は模索しているんだ。作家としての死に場所を。最高の小説が生き続けられる場所を。
「ま、夢物語だね。完璧なんてこの世にあるわけじゃなし」
欠伸をして、先生は締め括った。
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