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それからしばらく、ぽつりぽつりと話す。先生の声がとろけてきて、あ、眠いんだと察する。切ろうかと提案したものの却下された。さびしいからやだ、とのこと。可愛いかよ。
電話のむこうから呼び鈴が聞こえる。部屋についているらしい。どんだけ豪邸だ。田辺くんだよ、どうせ。いいよ無視しよう。そう先生は言うけど、連打されたので田辺さんじゃないことは俺にもわかる。
「あーも、うるさいな……ちょっと待ってて」
またノイズ。脚悪いのに先生歩かせるなんて……とイラついてたら、会話が聞こえてきた。
――――せんせーせんせー、のみましょーよー。
――――もうのめないよ。きみもねなさい。
――――えー、せんせい、けちー。あ、仕事? すんません。
――――いや、うちの子。
――――あーおれも話したいですー。
「ごめんね、佐久間だった」
「あー、いえ」
「そういえば電話した理由忘れてたよ」
「なんです?」
「佐久間が、………ねーうるさい、ほんと……」
むこうでまた会話が始まる。先生に佐久間が絡んでるんだろう。
次に聞こえてきた声は先生じゃなく、だいぶ滑舌のわるい若い男の声だった。
「もしもーし、バイト君?」
あ、一発で嫌いになりそうな声だわ、これ。
「はーい」
一応、返事をしてやる。
「どもー、佐久間めろんでーす! もうねー、ずっと先生が君ののろけ話してるからー、興味わいちゃってー、学生なんだっけー?」
「あー。はーい」
「いいでしゅねー。センセのとこでバイト出来るなんてー。おれもやりたいなーって、売れっ子作家だから出来ないかっ! あははっ!」
「あははー」
「まーでもこの、作家同士でしか出来ない会話っていうの? 大人だけで酒呑んでグチ? みたいな? 大事だよねーえ!」
うっぜこの酔いどれが。
のろけてないよって先生の声が聞こえる。ってことはそれだけ二人は近くにいるんだろう。むかつく。
「のろけてたっしょー! もーでろんでろんにー。先生酷いよーおれというものがありながらー」
やめなさいと先生の声。なにしてんの、まじで。ていうかこれを聞かされてるの、拷問なんだけど。
「ねー、バイト君っていつまでバイトすんのー?」
「あー、作業終わったらですねー」
「へー! じゃあ、もうそっから先生と会えないじゃん! もったいなー! さびしーっ!」
なんかまたしばらくむこうで会話が始まる。なんだかなあ。
「……ごめん、佐久間うるさくて」
「…………いーえ、べつに」
「ごめんね。もっと声聞きたかったんだけど……邪魔がいるから、またね」
「あ、はい」
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
どうせ切り方もわからないだろうから、俺から通話終了を押す。なんか、声も聞けたのに、それなりに甘い会話はあったのに、すごい消化不良だ。
激安学生アパートでひとり、ひざをかかえて目を閉じる。今頃先生は友人の豪邸で楽しくやってんでしょうよ。
もー寝てしまえとベッドにもぐりこむ。一時間後、ラインが届いた。画像? 先生から? なんだろう。
開いたら、先生の寝顔と上半身の写メ。続いて文章。
『センセー寝ちゃったかわゆす サービスショットだよー(笑) By佐久間めろん』
(笑)じゃねーし。
つーかまた先生からじゃないのかよ……。
画像を凝視する。うん。可愛いよ。可愛いってなんかちょっと違うかもしんないけど、まあほっこりするよね。普段ミステリアスなだけにこういう人間臭いのはギャップがあっていいよね。
でもさあ。
なんで上半身裸なんだよ。
(怒)
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