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「ミサカさんと連絡ついたよ」
先生が、飲み物を持って戻ってきた。お盆に乗せられた人数分のカップ。ミルクティーのような色をしているけど、香りが全然違う。シナモン? だけじゃない。ほっとする複雑なスパイスの香り。口をつけたら、ほんのり甘くて美味しかった。
ミサカ、というのが佐久間めろんの担当で、今回同行している人らしい。迎えに来るらしいので、それまで待つことになった。
佐久間は徐々に元気を取り戻し、顔を洗ってサッパリしてからは饒舌になる。先生にひっつきながら、今回の道中であった面白い話や初めて知ったことなんかを、もそもそ喋る。先生はそれを楽しそうに聞き、俺もたまに言葉を挟む。
やがてミサカさん、がタクシーで到着する。編集者が先生にへこへこ頭をさげてる横で、佐久間がおどおどしながら俺の連絡先を知りたいと言ってきたので、ラインを交換した。
見送って、静まり返った道路にしばしたたずむ。空は真っ黒。目をこらすと、小さな星。針で穴を開けたような、なんて例えたのは、誰だったか。
寒いから入りなさい。先生にうながされて、家にもどる。
食器をさげて、テーブルを拭いて。
上着をはおったら先生が裾に指をひっかけた。
「泊まっていきなさい。もう遅いから」
「ううん。今日は帰りまーす」
その指をすべらして服を着る。わざと明るく言う。リュックを持って出ていこうとしたら、今度は手首をつかまれたから、先生の顔を嫌でも見ることになる。
「……………」
「……………」
けど、やましいことなんて何にもないふりしてまっすぐ見つめたら、視線をそらすのは先生の方だった。
「……なんですか?」
「…………いや、」
気をつけて。
俺のほうからキスをして、どうせ明後日にはまた会うんだから、と笑った。
帰り道はひたすらに寒かった。
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