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『番外編:青い鳥』1
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>>四宮 春喜
『番外編:青い鳥』
グラスに水と氷を入れて、粉を溶かした。マドラーでかき混ぜる。
それを何食わぬ顔してリビングに持っていき、すでにぼーっとしてる賢人の前に置いた。コタツの上には酒の空き缶やらグラスやら、つまみが散らばっている。灰皿には吸殻がたくさん。
「飲めよ」
「……ありがと」
本当はお礼言われるようなこと、してねーんだけどな。賢人の隣にぴったり座る。さも心配してるふりして大丈夫? って聞いたら、ふにゃっと笑ってこう答えた。
「んー……なんでだろ、今日酔うの早い」
バカだな。ちげーよ。
さっきからお前に渡してる水には、気持ちよくなっちゃう系のお薬が入れてる。だからいつもより頬が赤い。熱っぽい吐息。目許がぼんやりしてる。
「疲れてんじゃねーの」
「んー……」
「あ、日本酒苦手だった?」
「……ん、……」
「……………おーい」
「…………」
落ちたな。ぐっと身体を引き寄せたら、簡単にもたれかかってきた。火照ってる。舌なめずり。あんなに酒を飲んだのに唇はカサカサだ。緊張してんだ。ずっと欲しかったものが今夜、ようやく手に入るんだから。
「さーかーひーと。水飲めよ」
「……んー」
グラスを取って、朦朧としてるそいつに飲ませる。口の端から雫がこぼれて、奴の着てるセーターにパタタッと落ちた。えろい。あーだめだ、もう我慢できない。
奴の口許を舐めて、そのままキスをする。口の中はぬるぬるしてて熱くて気持ちいい。酒と煙草臭いのは、お互い様だ。
とろとろの舌を絡ませて、唇を吸って。抵抗されたけど、力が入ってないから、いなす程でもない。はいはい、可愛い。そんなんだから、今から酷い目に遭うんだよ。
「…………はるき」
充分満足したところで、唇を離した。俺の名前を呼んで睨む。その瞳が熱に冒されて潤んでる。
「なに」
「……なんか入れたろ」
酒に。
あはっ、バレた。
でも今更おせーんだよ。
俺は答えずに、そのぐずぐずになってる身体に腕を回して、今まで寄りかかってたベッドに寝かせる。眩しいと呻かれたから、天井の蛍光灯を消して、間接照明に切りかえる。ほのかに明るいオレンジの光。
「や、だ」
セーターの中に手を突っ込んだら、また睨まれた。本気で嫌なんだろ。知ってるよ。お前がホモじゃないってことぐらい。でも仕方ねーじゃん、お前、可愛いんだもん。ムカつく程には、さ。
本気で嫌でも薬には勝てないみたいだ。しばらく撫で回してたら、気持ち良さそうにのどを鳴らして、その身体から、さらに力が抜けた。また唇を合わせる。あーあ、ほんと、ムカつく。こんなに簡単なら、もっと早くにブチ犯せばよかった。
四宮 春喜(しのみや はるき)。これが俺の名前。最初にあいつとした話題が、名前の話だった。
「ハルノブとか言われんの。うぜぇ」
「僕もやたら間違えられる」
「なんて?」
「ケント」
「あー……」
古城賢人。確かに、サカヒト、と一発で読める奴は少ないんじゃないか。でも下の名前より、古城の名を出されるほうが嫌なのだと、彼は冷たく笑った。
それこそ、仕方なくね? 古城ってこの辺じゃ有名だ。土地も金もありあまって、なんか政治に関わってるお偉いさんだろ。
もちろん、そこには突っ込まなかった。その立ち位置が気にくわないからこそ、俺らみたいな奴らの輪に入ってきたんだろう。
最初は島津先輩が連れてきた。喫煙所でひっかけたらしい。煙草ってどう吸うんですか? そんな質問をした賢人を先輩が気に入って、同じ二年生だろ、と俺に押し付けてきた。
同じ二年だけどさ。やたら授業サボってナンパや遊びに繰り出してる俺とは違って、こいつ真面目じゃんか。いつも隣にいる眼鏡も、すげー優秀だって聞いてる。すぐに教授に顔覚えられてたもんな、あいつ。
わー苦手。でも話していくうちに、賢人も内面は俺らぐらいにやさぐれてるんだって知った。もう生きてるのに疲れた、みたいな。これから先、ろくな希望も残ってないのを知っているような。
煙草も酒もやったことがないし、遊びだって全然知らない。難しい本を読んでる。そのへんはやっぱりお坊っちゃまだなって感じたけど、とにかく女が嫌いらしく、仲間のカノジョや女友達が来ると逃げた。建前で愛想振り撒けないほど無理なんだって俺らに打ち明けた彼の顔は蒼白で、まーなんかあんだろって、誰も深くは突っ込まなかったし、ナンパや合コンや、女が絡む遊びのときは賢人を誘わないようにした。
俺は女ともヤるけど、男のほうが好きだ。抱かれる側のほうが気持ちいいって知ってる。男もイケるのは俺と島津先輩だけで、先輩はけっこう残忍でえげつないプレイがお好みだから俺は遠慮してる。先輩も仲間には手は出さない。
賢人を意識したのは、先輩が彼をひっかけそうになって、俺がそれを取りなしてからだった。友達なんでやめてくださいと言えば、折角好みだったのに、とあっさり先輩は引いてくれた。あの神経質で暗い奴の何がいいんだろう。そう思って賢人を見てみれば、世間知らずで初心なところも、厭世的に冷めた目付きが俺に笑いかけるとき色を取り戻すのも、細く骨ばった指先の不器用さ、ただ突っ立ってるだけなのにすらっと伸びてる姿勢、気付いたらドハマりしてた。
だからずっと抱きたかった。タチはしたことなかったけど、こいつのことはむちゃくちゃに犯したいと思った。
「ん、あっ、あ………」
あーあ、気持ちよくなっちゃってんじゃん。薬、基本は一回一包だけど、二、三飲ませたから相当やばいはずだ。だってまだ、上を脱がしてなめ回してるだけなのに、ちんこがガチガチに固くなってる。はは、それは俺もか。
ズボンの中、手を入れたらもうぐずっぐずに濡れてた。可哀想だから慰めてあげよう。服を脱がす。きっと誰にも触られたことのない肌。
「やだ、あ、っ……」
力のない腕が俺に絡みつく。口ではやだって言いながら、抱きついてくるし、顔を近づければ自分からキスしてくる。誘ってるようにしか見えねえっつーの。穴に指を突っ込んだらぬるぬると簡単に奥まで入って、こいつは涙をポロポロとこぼしながら女みたいに喘いだ。
「や、だ、やめて」
「やなの? 気持ちくない? ……こことかさ」
「んあっ、気持ちいい、ああっ」
こんなにうまくいくとは思ってなかった。ちんこを突っ込めば、そこは熱くて狭くてどろどろで、無我夢中で腰をふったらあっという間に果てた。けど全然まだ足りない。完全に意識のなくなったそいつを、俺は気のすむまでもてあそんだ。
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