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何も言えず、頭を抱えたままの僕に、女が触れた。
「触るな」
「私はあなたを許したいの」
顔をあげて睨めつける。唇を奪われた。
予想外の女の行動に、面食らう。
少しかさついた感触が生々しくて、気持ち悪い。突き飛ばす。女は笑った。
笑って、試すように僕を見た。
そのときにようやく、これからが罰なのだと気付いた。
「……やめてくれ」
服を脱ぎにかかる女から目をそらす。裸になり、女は再び僕に触れた。払いのけることは出来ない。もう、さわれない。そこにいるのは肉体だ。僕より非力で、簡単に壊すことのできる。僕から触れることはできない。
「……このことを彼女が知ったらどう思う」
言葉を繰り出すのが精一杯だ。
「言わなきゃいいだけじゃない」
女は笑う。それに彼女もう、他の人と結婚してるのよ。
「……君がどう思われるかって話だ」
「千代の話はもう終わり。ここからは私の話なの」
そして、またキス。僕は目を閉じる。怒りに任せてまた突き飛ばしたくなるのをこらえる。もうこれ以上何も見たくない。
「あなたをわからないままであの映画は撮れない」
女は真剣な口調で言う。
「仕事のため?」
「そうよ。必要ならあなたに愛してるとか言うけど?」
「要らない……頼む。本当にやめてくれ。無理なんだ」
「どうして?」
答えられない。嘘をつこうと考える。
「…………実は本当に好きな人としか出来ないんだ」
「くだらない嘘つくのね」
嘲笑された。
「今まで恋人もいたことないくせに。あなたが不能でもゲイでもないことは知ってるわ」
「…………なんでそこまで僕にこだわる」
「好きだからよ」
目を開けて女を睨む。また彼女は笑って、唇を近付ける。太ももを這う手を払いのけたい。でも僕は動けない。駄目だ。やるな。冷静でいろ。
「お綺麗な顔して作り笑いしてるより、そうやって怒ってるほうが魅力的……」
「人の嫌がることして楽しい? 自分さえよければいいのか君は」
「嫌なら抵抗しなさいよ。どうして指一本出せないの?」
答えられない。
追い詰めないでほしい。
頼むから。
目を、またそらす。女の肢体が視界に入らないように。
彼女は僕の両手を取り、握る。あたたかくてやわらかい、小さな手。
「…………嫌なんだ、本当に」
「…………本当に女が嫌いなら、そこまで優しくできないわ」
さっきまでの挑発するような口調ではなかった。
「ねえ、私にだけでいいのよ。教えて?」
「………………なにを」
「あなたが本当に嫌いなのは、誰?」
そんなのは。
わかりきってる。
彼女が僕の片手を、自分の胸へ導いた。また唇を重ねた。
僕はそのまま手を、彼女の首にかけた。
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