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.(玖音side)
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時計を見たら出かけてからまだ一時間しか経ってなかった。
もう見慣れたアパートの階段を上がってインターホンを押すと玄関で待ってたのかすぐドアが開いて和くんが出てきた。
「おっ、おかえりなさい…っ」
何故か緊張した様子で向かえられて不思議に思ったけどすぐに分かった。
…ああ、そっか。さっき言ったの意識してるのか。
「ただいま。和くんがいいな」
「…何も聞いてないんだけど…」
少しだけ頬を赤くしてむっとする顔にいつもの調子を取り戻してる気がして安心した。
少しずつ溶かしてあげられればいいな…
ふと思い出してポッケの中に手を伸ばしてネックレスを和くんの目の前にぶら下げた。
「はいこれ」
「あっ!」
見つけた瞬間ぱあっと表情が明るくなって受け取るとほっとしたような顔でくしゃくしゃになってネックレスを手の中に包み込んだ。
「…よかった…ありがとう」
ふわっと柔らかい笑顔で大切そうに握りしめて本当に嬉しそうに笑うから、取り戻せてよかったと思った。
別に新しいものを買ってもいいかなって思ってたけどきっと和くんにとってはこれが大切なんだろう。
しばらくネックレスを眺めてから僕を心配そうに覗き込んだ。
仕草がいちいち可愛くて堪らない。
「…大丈夫だった?何もされてない?」
「え?…ああ、大丈夫だよ」
別に対して怖くなかったし。
和くんに手出すなら僕が相手してもいいって思ってたから…
そんなこと言ったら怒られるだろうけど。
まあ強いて言うなら…
「ボールペンが一つ壊れたくらいかな」
「ぼ、ボールペン…?壊されたの?大丈夫?」
「ナイショ」
不思議そうな顔をする和くんに唇に指を当てて軽くウインクをする。
首を傾げて誤魔化されたことに不服そうにしてたけど「そっか…」って呟いた。
「…けど、よかった。玖音が無事でよかった…」
本当に安心した弱々しく震えた声でそう言った和くんを見て思ってたより心細い思いをさせてしまってたと気づいて頭を撫でた。
しばらくされるがままに撫でられていたのが甘えたように身体を寄せてきたからちょっとびっくりしたけど優しく抱きよせた。
背中に回る腕が心地よくて目を瞑る。
きっと昨日の今日で一人になるの不安だったんだろう…
素直に甘えてくるのが可愛くて玄関だっていうのにその場に座り込んでただ抱き合っていた。
「…ありがとう」
多分そのありがとうには色々な意味が詰まってた。
ネックレスを取り返してくれてありがとうとか、
我儘を聞いてくれてありがとうとか、
許してくれてありがとう…とか
「どういたしまして」
それが正解かはわからないけどそう返して微笑んだ。
「…好き」
「ん…、僕も好き」
昨日からデレが強いから好きって沢山言ってくれるの嬉しいな…なんて惚気けて抱き直す。
緩んだ襟元から見えてしまった。
つけた覚えのない真新しい痕。
僕がつけたものじゃないモノ…
「……」
無意識に抱きしめる力が強くなって誤魔化すように顔を肩に埋めた。
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