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(やば…っ)
もう遅い。
ゴーン…と静かな音が響いて反射的に二人の視線がこっちに向いた。
玖音が驚いたような顔を浮かべた。
「和くん…?何で…」
「…っ…」
名前を呼ばれた瞬間弾けるように非常階段の方に走り出した。エレベーターが来るのを待っていられなくて、逃げ出したくてそっちに行くしかなかった
「え、ちょっと!
…悪い、部屋入ってて!」
後ろで名前を呼んだあとそんな言葉が聞こえて胸が締め付けられる。
非常階段のドアを開けるとぶわっと風が舞い込んできて外の階段を駆け下りる。
「待って!和くんってば…!」
こんな階段余裕なはずなのに、部活で走る時にはない荷物が邪魔で思うように走れない。
…やだ、嫌だ、今顔合わせたら嫌なこと言っちゃいそうだから。また疑うようなこと聞いてしまうから。
…嫉妬に任せた嫌な言葉や不快にさせる言動をしたくない。
追いつかれることはない、って思ってたのに
「…うわ…っ?!」
思い切り階段を踏み外してバランスを崩して二三段落ちて転んでしまった。
咄嗟に手をついたから擦れて痛みが走る。
(痛…っ)
すぐ駆け下りる音が響いて追いつかれて肩を抱かれて身体を起こされた。
「は…っはぁ…、大丈夫?!怪我とかしてない…?」
何階分駆け下りたかわからないけど玖音は息が上がってて辛そうだった。
けど何より俺の身体を心配してくれた。
なんだかそれだけで気が抜けてしまって…へなへなと力が抜けていく。
…優しい。
「…大丈夫…」
「嘘、手擦りむいてる」
手を取られて傷口を柔らかくて熱い舌に舐められてびくっと肩が震える。
「…ゃ…」
「応急処置。家戻ったらちゃんと水で流して手当するから」
「や、だ…家、…」
そう言われて首を横に振る。
だって今行ったらあの子がいる…玖音もわかってるのになんでそんな事言うの。
疑う言葉なんて言わせないで…
「さっきの女気にしてる?」
「…」
黙っているってことは肯定してるようなもので、俯いていると頭に手を乗せられてくしゃくしゃに撫でられた。
恐る恐る顔を上げたら安心させるような笑顔を向けられた。
「あれ妹なんだよね」
…え?
「……妹…?」
「そ、妹」
…妹。
…俺…妹さんに嫉妬してた、ってこと…?
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