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④
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「ワニか、ちょっと食べてみたい」
「え!? 」
「なら、数日後また店に来いよ。何匹か持って帰ってくるみたいだけど、きっとそのお客さんだけじゃ食べきれねぇだろうから、おやっさんに言って食べれるようにしてやるよ」
「マジか!」
「少なく見積もっても、数十人分はあるからな。他にも食べてぇやついたら連れてこいよ。ワニ肉なんて早々食べねぇだろうし」
「なら、チームのやつ連れてきていいか!」
「チーム? お前、チーム入ってんのか?」
「Cliasって言うんだけど、知らね?」
「知らね。チームとかきょーみなし。それに、母さんには、喧嘩以外で迷惑かけたくねぇ」
カチャカチャと何かを混ぜる音が響く。そんな中、歩は言いずらそうに口を開いた。
「喧嘩って、迷惑行為の上位なのでは……」
「やめられねぇんだよこれが。強い奴と闘うの楽しいし、そいつに勝った時の爽快感は最高だしな。……まるで、麻薬みたいだよ。だから、喧嘩は好きにしていい変わりに、酒タバコなんかの不良行為はぜってぇしない。勉強はしっかりやって、学校もきちんと行くって母さんと約束したんだ」
「へぇ」
「まっ、俺の高校、真面目ちゃんばっかだから、俺みたいな奴でも不良認定らくて、めっちゃ遠巻きにされてるけどな。ほら、出来たぞ」
2人の目の前に置かれたのは、ケチャップがかかった半熟卵のオムライス。色とりどりの野菜が入ったポテトサラダ。丹念にこされたじゃがいものポタージュだ。
見た目から美味しいと分かる料理の数々に、リクトは出そうになった涎を慌てて拭った。
「どーぞ」
「「いただきます」」
オムライスを一口、口の中に入れたリクトは、じんと体が痺れるのを感じた。体の細胞が待ってましたかのように震えているのだ。素直な感想が、口から零れ出す。
「うまい!」
「本当に美味しいです!」
「そうだろ、そうだろ。デザートも作ってやるよ。甘いの大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。リクトは甘いの苦手です」
「りょーかい。そしたら、リクトのは甘さ控えめで作るな」
「わりぃな」
「へーき」
再びカチャカチャと言う音が聞こえた。透琉が再び料理を始めたのだろう。
「それにしても、本当に美味しい」
まさか、こんなにも美味しい飯に辿り着けるとは。リクトも歩も無我夢中でご飯を掻き込んだ。
「……あ」
ふと、歩はリクトの口の端にケチャップが付いているのを見つけた。気付いているのかなと横目で見るが、どうやら本人はご飯を食べるのに夢中で気付いていないみたいだ。少し子供っぽい恋人の行動に、歩は思わず笑みを浮かべる。
「リクト、ケチャップ付いてますよ」
「え? どこ?」
「ここです」
身を屈めた歩は、そのまま舌でケチャップを舐めとる。ケチャップも自家製なのか、市販のやつよりも美味しい気がする。
「ちょっ、歩!」
「え?……あっ!」
リクトの慌てた声で、歩はハッと我に返り、青ざめた。ここが外で、しかもこの場にいるのが、リクトだけではなく、透琉もいた事を忘れていたのだ。友達というには少し無理のある行動をしてしまった。
「(ヤバい……!)」
一般的に同性愛は、まだそこまで浸透していない。きっと透琉も引いたはずだ。なんと言い訳すればいいのか。
「あ、あの……」
油が切れたロボットのような、ぎこちない動作で透琉の方を向いた歩が見たのは。
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