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心詞side
俺は物心ついた頃から音楽に触れあい、音楽を愛している。
特にピアノや歌が大好きで、小学校を上がる頃にはピアノコンクールの全日本大会に出場するのは当たり前となっていた。
それは、現役のピアニストの母と作曲家の父の間に生まれたのもあると思うし、自分で言うのもアレだが、元々の自分の才能故とも思っている。
自分自身の才能にはかなりの自信を持っている。
自分から音楽を抜き取ってしまったら、自分自身が消えてしまうのではないかと怖くなるほどに。
そうでもしないと…
「じゃあ頼む!スクールアイドルを俺達と一緒にやってくれ!」
「はぁ…はぁ?」
さっき、去年同じクラスだった伺史次月に突然、曲を作れるか否かを聞かれ、当然「作れる」と言ったところ…どうしてこうなった。
スクールアイドルといえば…確か最近よく耳にする、学校内のメンバーのみで行うアイドル活動の事だろう。
それであれば、わざわざ俺をメンバーに入れずとも、曲作りだけを任せればいいのに。
事情を聞くと、メンバー不足の立場でもあるらしく、曲作りとメンバーの両方の才能を持っているが俺だったらしい。
俺には放課後は毎日ピアノのレッスンがあり、そんな事をしている暇もない。
いや、実際毎週木曜の放課後は特別に音楽室を貸しきったりと放課後の2,3時間は自由に活動は可能だ。
…ただ、実質そんなに自由とは呼べないだけで。
スクールアイドルなんて"彼ら"はきっと認めてくれないだろうし。
「ごめん。俺はやらない」
「そんな事言わずに!頼む!」
「だが断る!」
「お願いだ!」
「俺には時間がないんだ!」
「頼むッ!!この通りだ…!」
「はぁぁぁ!?」
頼み事と拒否の攻防戦を繰り広げているうちに、相手は何を血迷ったのか、とうとう土下座までし始めた。
「ちょっ!次月やりすぎだって!」
「お前何やってんだよ!」
「あ!ごめん俺なんかスイッチ入ってた…」
約二名の謎の乱入者も出て来て、いよいよ俺の頭の中が短絡し始めた。
四人の間に沈黙が流れ静かになる。
俺たちを中心に波紋が広がるように、あんなに騒いでいた教室も静かに…ん?
そこで俺は気づいた。
クラス中のひんやりとした空気。
今は5月になったばかりで、まだまだ体感温度的にはそれなりに温暖で、冷房もいらないはずだ。
つまりは…そういうことだ。
痛いくらいに刺さる視線。
ピアノコンクールや、取材に来たテレビとかで沢山の視線には慣れている。
だが、こんなにもひんやりとした視線を浴びるのは初めてで、俺は思わず伺史の腕を引いて校庭まで逃げてきてしまった。
そこで今度は謎の乱入者二名にスクールアイドルの事について説得され始めた。
「嫌だね。そんな暇ない」
クラスで赤っ恥をかかされたうえに、よく分からないことに巻き込まれるなんてまっぴら御免だ。
「お願いしますッ!俺ら悠木君が必要なんですッ!」
ここまでキッパリと断ってるのにまだ来るか。
まぁ昼休みが終わるまでそんなに時間はない。
予鈴がが鳴ったら逃げよう。
俺は黙って腕を組んだまま、向こうが諦めるのを待機している。
頭を下げていたいかにも『アホの子』という雰囲気の奴が勢いよく頭を上げる。
俺と対照的な丸い目が俺の目と重なる。
「…!?」
目で語るというのはこういうことなのだろうか。
こいつの目が「本気でやってやる」と言っていた。
断り続けようとしたのに、その目が断ることを許してくれない。
…仕方ない。まず今日の放課後見てやるか。
それで駄目なら切り捨てればいいだけだ。
「…放課後。すぐに音楽室に来い。3人ともだぞ」
夕方、ピアノのレッスンに向かう道。
放課後に音程聴いてやったが、想像通り酷い有り様だったな。
とくにあのアホ面。最初は半音もずれてやがった。
あんなのでよくアイドルをやろうと思ったな。
でも、最初こそカスそのものだったが、三時間みっちり教えたところ、ジャストで音程が揃う回数も増えてきた。
最終的にはあのアホ面も他の二人のレベルに追い付いたしな。
あいつの目は嘘をついていなかった。
あいつらもしかしたら…
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