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メンバー募集のポスターを生徒会の許可を通し、校内に貼り初めて3日が経った。
…けど誰も来ない!あのフード君も来ない!
ポスターはけっこう多目に作った。
各館各階に4枚ずつ貼っておいた。なのに!
実際、入るつもりはなくても、「へぇ。スクールアイドルやってるんだ」程度には俺達を訪ねる人はけっこういる。
そこで「どう!?今メンバー不足で困ってるんです!お願いします!」って言っても駄目だった。
四人…四人でもいいんだけど、もっと大勢でパーっとやりたいじゃん?
せめて、あのフード君だけでも来てくれないかな…
なんせ中庭で練習している今ここでも俺達の事を見に来てるからね!!!
ここ3日連続見に来ている。
変わらずずっとあの場所でコソコソと。
気にしている割りには訪ねても来ないし、入ろうともしない!
本当に彼は一体何者なのだろうか。
…決めた。今日こそは逃げられても追いかける!
それで彼の正体を暴くんだ!
ぶっちゃけフードの中身も気になるしね!
休憩時間になり、俺は早速彼がいる並木道へと向かった。
まるで彼のオーラに引き寄せられるように。
しかし、俺が近付いてきている事に気がついたのか、彼はスタスタと並木道の向こう側へ消えてしまった。
それでも俺は諦められずに、並木道の向こうを目指し駆け足で既に茶色い花弁を踏んでいった。
並木道の向こう側…裏庭の微かに花を残す桜の木の下に彼はいた。
息を整えているらしく、膝に手を付き下を向いて細い背中を上下させている。
いつものように、後ろから大声で声をかけたら、彼なら逃げる気がしたため足音を立てずにゆっくり彼に近づく。
ここ数週間で様々な人と関わって、いつもの調子を出す度に朱琉に殴られてきたから、学習した俺偉い!
息も整ってきたのか、彼は顔を上げた。
よーしよし。まだ気づかれてない!
俺が彼の隣まで接近することに成功した瞬間。
向かい風がビューっと音が聞こえるほどの勢いで俺らを襲った。
かろうじて枝に留まっていた花弁が次々に風にさらわれて行く。
どさくさ紛れに彼の顔を覆っていた黒いフードも風に吹かれ、そこから栗色のふわふわとした髪が揺れた。
息を…飲んだ。
黒いフードが外れ、露になった眩しいぐらい白い肌
周りを漂う花弁と同じ色の唇
突然フードが外れた事に驚いているのか、見開かれた大きな瞳
そこに覆い被さる長い睫毛が白い肌に影を落としている
美しい、という言葉でしか表現できない。
同じ男に筈なのに、魅惑されてしまう。
それぐらいに、彼の容姿は整いすぎていた。
「あっ…ね、ねぇ君!」
「…ッ!!!?」
さっきまでの風が嘘のように落ち着き、慌ててフードを被り直した彼の腕を掴み話をしようと試みた。
さっきの衝撃が忘れられず、なかなか次の言葉が出てこない。
「練習…見に来てた…あっ! 」
「うっ!?…あ…離し…てくださッ…!!!」
驚きからかとても震えていた彼の声と共に、彼を掴んでいた手を強く振りほどかれた。
そして間もなく彼は見えないところまで走り去ってしまった。
俺は、ずっと固まってしまって彼を追いかける事すらできなかった。
こんなにも綺麗な人、この世にいたんだ…
「…あ、いた!おい涼乃!休憩時間とっくに過ぎてるぞ! 」
「あ…かるっ!?…う、うんごめん!今行く!」
彼に夢中になっているうちに、時間を忘れていたらしく、休憩時間が終わった事に気付かなかった俺を探しにこちらへ来た朱琉に怒鳴られ、やっと現実に戻った。
そして、既に見えない朱琉を追って並木道を戻っていった。
彼は、この日を境に練習を見に来なくなった。
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