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波乱の幕開け(with王道)-4
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「藤崎先生、皆さん、落ち着きましょうか。宇理さん、先生は大人であって私達の担任です。決して対等な存在ではありません。これから、友達発言は止めるように」
私が言葉を発した瞬間、ざわついていた教室が一気に静かになる。
「あと、皆さんも一応はクラスメイトになるのですから適当に受け流せばいいでしょう?」
あの毛玉でさえ黙る。
澪自身は気づいていない、すべてを引きつける雰囲気に皆が見惚れ、押し黙った。
「仮にも、将来上に立つ人になるのですからそれくらいは出来ていないといけませんよ……もうこの件は終わりにしましょう」
しかし、空気を読まない…いや、読めないのが王道の転校生である。
「澪!同じクラスだったのか!!宇理って呼べってば!親友だろ!晶、俺、澪の隣に座る!」
「あー……駄目に決まってんだろ、席は空いてるとこだ。言う事が聞けないなら、出ていけ」
全く話を聞いていない様子の毛玉に、軽く頭痛を覚えながら再度ため息をついてしまう。
私の隣に座ると必死な毛玉に寒気を覚えた。
「藤崎先生、宇理さん、今日は初日なので一番前がいいかと思います。明日からなら、友人もできると思いますしここの席でもいいのではないでしょうか?」
なんとしてもあの毛玉に近寄りたくなくて、今日の安全を死守する為に私が今日だけしか授業に参加しないのを知らない事を利用して、先生に目配せしながら相談を持ちかける。
「あぁ…その方がいいだろうな。一ノ瀬、宝生の親切心だ、有り難く受け取っておかないと宝生が悲しむぞ」
すぐに気づいたらしい先生が、思わせぶりな言葉で誘導していく。
他の生徒も心無しかニヤニヤしているように見える。
「澪が言うなら、そうする!明日は隣に座らせろよな!」
納得したように大人しく前の席に座ってくれた。
これで今日、生徒会に授業中迷惑をかけることはないだろう。
「朝からだりぃな……SHRは終わりだ、このまま授業をやるぞー……宝生は他の先生から預かってるもんが有るから、受け取りに来い」
「はい、ありがとうございます」
荒れた朝にどっと疲れながら、溜まったプリントやテストをサクサクと片付けていった。
あの毛玉は寛大な奏様でも無理だろう。
そして恐らく、奏様に惚れる。
あの特別希少種な+αで、見た目麗しく、すべての人が思わず跪くようなカリスマ性を持ったお方。
会った人は大体が恋に落ちる。
幸い、奏様の参加は午後の1コマなのでそれまでにどうにか遠ざけなければならない。
私の仕事は奏様が不自由なく過ごせるように周りの環境を整えること。
奏様が歩く道の石ころをどんな小さい物でも取り除く。
「後、2年……」
首に付けている、Ωの印を擦る。
奏様が中等部に入る前にくれた、噛み付き防止の硬い首輪は長時間つけていても痛くならず、デザインも黒地に金の刺繍により上品さが溢れている。
ただでさえ少ない時間を、毛玉なんかに邪魔されては堪ったもんじゃない。
どうすれば自然に遠ざけられるか、手に持つシャープペンをクルクルと回しながら考えた。
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