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大神 奏の独白-2 (side 奏)
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………俺は澪が好きだ。
大神家の長男は初等部に入る少し前に、親から生涯付き従う宝生家直系血族の専属側使えを貰い受ける。
長男以外は宝生家の分家(娘が嫁いだ家や長男以外の兄弟)が請け負う。
これは大神家と澪の実家、宝生家のしきたりで当時の俺も使えれば良いという考えだった。
希少な+αとして生まれた俺はガキにしては考えが達観していたし、基本的に与えられたことは全て上手くこなしていた。
嫌いではないのだが、力の弱いΩだと言うから手合わせも出来ない………ただ貰えるものは貰っておこう、そんな考えで初めて澪と会った日。
………俺は一目惚れという初恋をした。
目は大きく、それを縁取る睫毛は瞬きをする度に音が聞こえそうなくらいに長くて。
髪は黒曜石の様に艶めき、瞳は黒真珠のごとく輝く。
緊張のせいか、赤みを帯びた頬はシルクのようになめらか。
薄い唇は桜色のグラデーションで、骨格どうなってんだって聞きたくなるくらいに小さい顔。
俺より身長が低いくせに堂々としていて、さらにその美しさに正直目が離せなかった。
「初めまして、我が主様。本日より大神 奏様のお付きになります、宝生 澪と申します。誠心誠意、生きうる限り尽くさせて頂きますので、今後とも宜しくお願い致します」
声は風鈴の様な優しい感じ。
父さんに従いているのは澪の父親の雅(ミヤビ)で、αにしては物腰柔らかで美人寄り。
その子供がここまで美しくなるとは誰も思うまい。
その日から澪が俺の身の回りの世話を執事やメイドに代わりやってくれた。
俺は毎日別々の習い事があるのだが、柔道の日には柔道着、空手の日には空手着、合気道の日には袴、外国語の日は各言語の教材、塾の日には専用の鞄に全て削られた鉛筆とお気に入りブランドのペンと各教材、スポーツの日にはユニフォーム。
衣装は全てシミ一つない柔軟剤の香りがしていて、その全ての日に俺がちょうど食べたいと思っていた軽食までつけて用意され、帰宅すれば既に風呂が沸いていて夕食も出来ている…………とても気が利く奴だった。
Ωでできる事はかなり限られてくるはずだが、並ならぬ努力でここまで仕上げたのだと悟った。
どんなに美しい女に出逢っても、俺をしつこく誘うΩがいても全くと言っていいほど興味がわかず、発情フェロモンのコントロール教育ではいろんな意味で苦労した。
その美貌と気遣い、優しさと奥ゆかしさに初恋を拗らせ高校生になった。
その美貌は更に磨きがかかり、気遣いのできる性格から瞬く間に人気者となっていった澪は俺よりも信者が多い。
初対面のやつは殆どが惚れ、掛け持ちで全校生徒が澪の親衛隊に入る程にまでになり、誰かが澪に告白しようとするたびにフェロモンで牽制し、ストーカーになったものには夜神双子の夜の力を借りて潰してきた。
俺の築き上げた全ては澪のため。
澪がかっこいいと言ってくれなければ格闘技もここまでは極めなかったし、Ωなのに発情期が来なくても別にいい。
澪の唯一になりたくて主として威厳ある人になれるように頑張ったが、『好き』という言葉だけは言えなかった。
澪は俺に対して絶対的な忠誠心を持っていて、俺が付き合えといえば文句なく付き合うだろう。
………違う。
俺が欲しいのは、澪の本当の気持ち。
蓮達は、澪は俺のこと絶対に好きだと言うけれど、この気持ちを伝えたところで従者として出来ないとか、勘違いですよとか言われる事を思うと、如何せん怖くて仕方がない。
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