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初めての-4
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また少しフラフラして足元が覚束ないが、仕事を頑張っている奏様に少しでも栄養のあるものを召し上がっていただかなければ。
ほうれん草をさっと茹で、3センチ各に切りポン酢に漬け、食べるときにはお好みで鰹節やちりめんじゃこを。
だし巻き卵は3個の卵を使って、奏様好みの甘くない味付けにする。
「……よし、キレイにできた」
沢山の練習を重ねた料理の中でも、一番練習したのがこのだし巻き卵だった。
奏様の専用になってから初めてお出しした料理がこのだし巻き卵。
その時私は簡単な言葉の挨拶なんかより遥かに緊張していた。
料理を気に入ってもらえなければ、そこで私の役割は終わりなのだから美味しいと言ってもらえるよう必死で焦り、砂糖と塩を間違えるという初歩的なミスをしてしまった。
すべてが終わったと泣きそうになっていると、奏様は直ぐに完食し、
『あんなに甘いのより、こっちのほうが美味い。澪、これからはこの味付けで作れよな』
と言ってくださったのだ。
嘘を言わないで、と問い詰めたが本当に好きなのだと言って聞かなかった。
もしかしたら、好きになったのはあの時かもしれない。
父様には怒られたが、その後も奏様は事あるごとにこのだし巻き卵を作れとおっしゃった。
だから、美味しいと言ってもらいたくて焦げやすいだし巻き卵を焦げシミ一つないキレイでふっくらした完璧なものにできるよう練習を重ねた。
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