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居場所-5
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『それで、だ。お前はもう本家には帰ってくるな、二度とだ。Ωなんだから、そこら辺の人に買ってもらえば死ぬこともないだろう?
……卑しいだけのΩは体を使えば容易に稼げるのだから便利なものだ。
発情期の来たΩなど、儂らαにとって害以外の何者でもない。二度と本家に帰ってくるな、奏にも絶対に合わせん。
雅のやつには奏の子、ひ孫の世話係を作らせねばなるまい。
次は優秀なαが産まれるだろう、お前のようなΩを産んだんだから雫もさっさと切り捨てて他のαと作らせよう。
とにかく、お前が今から宝生を名乗ることは許さん。
お前はもう、大神家とはなんの繋がりもない、ただの一般人だ。あぁ、もう連絡も許さん。
せいぜいΩとして尻尾を振って他人に媚びていれば良い…二度と、戻ってくるな』
「………え?」
そう答えた頃にはもう画面は暗くなって通話が切れたあとだった。
理解するのにどれくらいの時間を要したか。
わからない、わからない…………
奏様の元を離れて、なんとか忘れようと奮い立たせていた心が折れる。
……心臓が痛い。
私は、捨てられた………?
もう、用済み…?
どうして、こんな………
奏様、私は…………
手からスマホがずり落ちて足元に激しい音を立てて転がった。
太陽が登り明るくなってきた車内では落ちたスマホの画面に亀裂が入っているのが見えた。
目の前が真っ暗になるのがはっきりと分かる。
今までの人生を全て大神家、奏様の為に捧げてきた。
毎日練習を重ねた料理も少しくらいは成様に認めてもらえていると思っていたのに。
おめでとう、は漸く切り捨てられることへの喜びで、私はあくまでΩだった。
人として、見られてなどいなかった。
母様はどうなるのだろう……。
母様もαのくせにΩの私を産んだと蔑まれてきた。
そのたびに守ってくれたのは、頼もしい父様と優しい湊様と大好きな奏様。
母様もよく抱きしめてくれたっけ。
その温もりすら、もう求めることは許されない。
Ωだというだけで、こんな仕打ちを受けなければならないのか。
嗚呼、痛い。
心が痛い。
涙がボロボロと溢れる。
……奏様…………!
――――――助けて……………
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