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帰宅-3 (Side 奏)
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視線を澪に戻すと、手が服の端を握りしめていることに気づく。
その手を撫でると一層握る力が強くなった気がした。
(そうだ、もう掴んで離すな。俺はお前のものでもあるんだから……)
「んん……かなで、さま………」
「……っ!」
本当に可愛いなぁ………。
寝言で俺の名前を呼ぶなんて、期待してもいいのか?
「ぬいだ、ものは………せんたくきに……ちゃんと……」
うぐ、すまん……澪……。
帰ってきたら服をソファや椅子にかけてそのまま忘れてしまうことが度々あり、澪に注意されたことがある。
期待した俺は間抜けか。
まぁ、あと少しで本邸に戻れる。
親父にはメールを打っておいたし、恐らく帰ってきているだろう姉たちにもこれまでの出来事を連絡しておいた。
1番上の椿(ツバキ)姉さんからは秒で返事が帰ってきたので少し怖かったのは、小さい頃にボコボコにされた記憶があるからだろう。
3人の姉は澪のことを殊更可愛がっていて、小さい頃は天使ちゃんと呼ぶほどだったらしい。
また煩くなりそうだ。
怪我をした澪のために俺の主治医である白の父親も呼んでおいた。
念には念を入れなくてはな。
問題はじい様だ。
朝からメールと電話を無視し続けて今に至る。
恐らく俺が帰ることを予測して本邸に居るはずだから、どうにか会わずに自室へ戻りたいんだが。
「奏、行くぞ」
どうしたものかと考え込んでいるうちに、迎えの車が到着したらしい。
秋に声をかけられ振り向くと翔はいつの間にか帰ったようですでに姿は見えず、全員が立っていた。
「すまない、今行く」
澪にかけてある毛布をずり落ちないよう体に巻き付け、横抱きにする。
「ん、う……」
少し身じろぐが薬がよく効いているのか起きる気配はなかった。
身長の割に軽い体を冷やさないように抱きしめる。
フワッと香ったいつものいちごの匂い。
守らなければ、今度こそ。
新たに決意を固め、店内を後にした。
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