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春の陽気の様な暖かい日差しが差し込む木造づくりの一軒家が広大な土地の川のほとりにひっそりと建っている。
築何十年か経っているであろう古びた扉を開けるとカランカランという軽快な鈴の音が来客を伝える。その音を聞きつけた家主が奥からカランカランという音を鳴らしながら出てきた。
「いらっしゃい〜って…ジェフか…」
客だと思って出てきた『気分屋』の店主が、私の顔を見るなり落胆する。
ジェフと気さくに私の事を呼ぶのはここの家主であり『気分屋』の店主の氷雨(ヒサメ)という者で彼もまた異世界から来た移住民です。見た目はまだ10代に見えますが、実際は100歳を超えるおじいさんです。
彼の元の世界での衣装だと言う、浴衣を羽織り下駄を履いたスタイルは氷雨の普段着になります。
「最近、めっきり客がこねーんだよなー。ジェフ本当に宣伝してんだろーなー?」
椅子に座りテーブルにうな垂れた氷雨が疑いの目で見つめてくる。
「ええ、しっかりしておりますよ」
「本当かよー?適当な事ばっか言ってんじゃねーだろーなー?」
鋭い所をついてくるが、そこは持ち前の笑顔でかわす。そして、勝手知ったるキッチンへ赴きお茶の準備を始めた。家の近くでとれた草花で作ったお茶を淹れ氷雨と私の前にコップを置き一息ついた。
「新しい移住民はどうだった?」
「んーそうですね。いつもと特段変わりませんね」
「そうか。もうそろそろ赤鬼も来る頃だな」
カランカラン
扉の開閉音が聞こえ振り返ると話題の赤鬼が店に入ってきた所だった。赤鬼は、ツカツカ歩いて来ると私の横にドカリと座った。
頭は真っ赤な髪で角を2本生やしさらしを巻いた姿が氷雨の元の世界に居たと言われる鬼に似ている事から彼は赤鬼と呼ばれております。
「おーおつかれー。今回も合格か?」
「あぁ、取り敢えずな」
彼は、この塔の一階のボスとして次の階に行こうとする移住民の審査を担当しています。訳あって一階で店を構えている氷雨の家に毎日お茶をしに来るのが日課です。
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