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「それにしても妙だな」
チーズパンを食べ終えた後再び歩き出した氷雨達。あまりに静かすぎる森の中に違和感を感じる。
「何かしましたか?」
「いや、こんなに歩いているのに魔獣の一匹も出てきやしないなんて妙だなと思ってな」
「確かに…何も出てきませんね」
辺りを生体感知の魔術で見回すがやはり、生き物が見当たらない。
「でも、おかげでシルキーを探しやすいです」
邪魔者が出てこない為、その利点はあるが不安が拭えない。
「あっ!近いです!気分屋さん。近くにシルキーがいます」
休憩してから20分くらいした後、セルが突如叫び走り出した。目先に見える大きな一本の木の上にいるようだ。
生体感知で検索してみると確かにその木の上にウサギのような形の生き物がいるのが分かった。
「っ!セル!止まれっ!!」
「えっ?」
突如木の陰から魔獣が出て来てセルに襲いかかった。
「うっ…大丈夫か?セル」
「大丈夫です…」
氷雨がセルを抱き込み転がった事で間一髪魔獣の被害に合わなかった。
セルを後ろに立たせ大きな木を背にして周りをみると隠れていたウルド達が姿を現した。ざっと、30匹は超えており鋭い牙をむき出しこちらの様子を伺っている。
「囲まれたな」
ウルド達の口からヨダレが垂れており獲物を見据える様な目でこちらを見ている。
「ど、どうしますか?気分屋さん」
氷雨の肩に手を置いているセルは、僅かに震えていた。
「片付けるしかないだろうな。お前はこっから動くなよ」
振り向きざま言った後、何も無い空間を漁り剣が出てきた。一眼でそこらへんにある剣とは違うと分かる代物を右手で取るとウルド達めがけ飛び込んでいった。
剣で斬りつけると、ウルドはキャインと鳴き青い血しぶきをあげる。負けじと周りのウルドが氷雨に襲い掛かるが下駄にも関わらず華麗に立ち回りウルドの攻撃をかわす。そしてがら空きになった腹を容赦なく斬りつけ沈めて行く。
ウルド達の数が見る見るうちに減り半数以下になった。氷雨に疲れは一切見えない。ウルド達の方が疲弊が目立っていた。
氷雨の目を掻い潜った1匹のウルドが今度はセルに襲いかかって来る。ひっと身を縮めたセルは痛みを予想し目を瞑る。
しかし痛みが訪れない。恐る恐る目を開けると目の前でウルドが口を開け血しぶきをあげて死んでいた。ウルドの頭の裏には先程まで氷雨が振っていた剣が綺麗にささっている。
生身になった氷雨を見たウルドが好機と思い襲い掛かるがウルドの1匹を捕まえた氷雨はそのまま振り回し周りにいたウルドを蹴散らして行く。
氷雨のあまりの強さに敵わないと悟ったのかウルド達は森の中へと消えていった。そんなウルドを鋭く見据えていた氷雨は、暫くすると倒したウルドから魔獣石や毛皮、牙などを綺麗に捌き収めていく。
魔獣を倒すと魔獣石という石を採取する事が出来るようになりお金に変える事が出来る。加工技術を持っているものであれば魔獣石を使った魔法具として扱う者もいる。
採取が全て終わるとべったりとウルドの青い血が付いた氷雨がセルに近寄ってきた。
「怪我はないか?」
「お陰様でありません。ありがとうございます」
セルが無事なのを確認すると氷雨は微笑んだ。そして上に潜んでいるシルキーを見やる。
シルキーは、安全なのを確認するとセルに向かって飛び降りてきた。
「シルキーっ!!」
「きゅいっ」
久しぶりの再会に熱い抱擁を交わすセルとシルキーは、ボロボロと泣き暫くお互いの存在を確かめる様に抱き合っていた。
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