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潜入捜査残り4日
心なしか女装に慣れて来た。
今日は、昼から街に出て慈善活動のお手伝いをする事になっていた。広場の噴水近くで魔法のお披露目や、風船配り、街民達との触れ合いに勤しむ。
氷雨は、まだ入団したばかりと言う事で今日はお手伝いに回された。
手伝いに回されたのはいいが、なんでこいつと一緒なんだよ。
氷雨の視線の先には、老若男女に優しい笑顔を向ける優人の姿があった。
まあ、今の潜入の理由を考えると都合がいんだがな。近づくなと言われた手前やりづらい。
すると氷雨の前に男の子がやって来た。
「お姉ちゃん。どうしてお顔見えないの?」
ギクっ
と氷雨の体が揺れる。子供は正直だ。触れて欲しくない話題にもストレートに言葉を投げてくる。
氷雨は、どう答えようかとあぐねながら取り敢えずしゃがみこみ男の子と視線を合わせる。
「お姉さんは、日に弱い体質なんだ。だから、フードを被っているんだよ」
我ながらいい答えだと思って踏ん反り返りたい気分だが笑顔で耐える。
「お姉さんは、吸血鬼なの?」
「い、嫌、そういうわけでは…」
「じゃあ、どーして?どーしてー?」
「あ、ちょ、やめてっ!」
強行突破に出て男の子がフードに手をかけ引っ張って来た。
どうしようかと困っていると、突然引っ張る力がなくなった。先程の男の子を見ると、優人が男の子を抱っこしていた。
「女性に乱暴はいけないよ?紳士でいないとね。はい、これ飴あげるから良かったら食べてね」
優しい笑顔で語りかけると男の子は、優人の美貌に見惚れたのか、飴に釘付けなのかうん。と素直に頷き飴を持って去っていった。
一安心とふうーと一呼吸おく。すると
「子供の1人もまともに相手出来ねーのかよ。使えねー手伝いだな」
優人は、ふんと鼻でひと笑し戻って行った。
先程の態度とのあまりの違いに呆然としてしまう。そして、腹の底から憤りがふつふつと湧いてくる。
なんだ。あいつ、助けてくれたのかと思ったらやっぱムカつく奴だな!!
優人の背中を睨みながら恨みがましく思っているとコートの裾をツンツンと引っ張られている事に気付いた。
そちらを向くと女の子が1人立っていた。
先程の事もあり少々警戒してしまう。
「お姉さん、元気出して?」
良い子良い子とフードの上から頭を撫でてくれる。
何て良い子なんだ!さっきのクソガキと大違いだな。
抱きしめたい衝動を必死に抑え込み、ありがとうと冷静に努め述べた。
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