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無言のまま僕の腕を掴み、黒尾さんは早足で歩く。
薄暗くて歩きにくい。
どこに連れて行かれるのかわからないのと、この人の考えていることがまるでわからないことに、僅かな苛立ちのようなものを覚えた。
「黒尾さん…」
小さく、だけど十分に聞こえるくらいの声で呼ぶ。
返事はなく、僕は軽く唇を噛んだ。
もうやめてくれ。
これ以上は無理だ。
視線も、声も、体温も。
この人の全てが、僕を壊していく。
苦しい、怖い。
「……っ!放せっ!!」
鼻の奥の方がツンと痛くなったの感じ、僕は掴まれていた腕を思い切り振りほどいた。
「もう…やめて…ください」
情けない顔を見られたくなくて俯く。
視界がぐにゃりと歪み、目頭が熱くなった。
「月島…」
いつものような茶化した呼び方じゃない。
すっと手が伸びてくる気配を察知し、僕はそれを叩き落とす。
瞬きと同時に、絶対に見られたくなかったものが僕の目からぱたぱたと零れ落ちた。
「僕に触るな…!」
こんなのはただの八つ当たりだ。
わかってる。
この人を、黒尾さんを好きになってしまった僕が悪い。
だから必死だった。
気づかれないように、いつもの月島蛍であり続けなきゃいけないと思った。
でも、もう終わりだ。
零れる涙もそのままに、僕は黒尾さんを睨む。
黒尾さんも真っ直ぐ僕を見ていた。
「…俺が嫌い?」
違う。そうじゃない。
「嫌い、です…」
好きだ。
初めて見た時からずっと。
でもこれでいい。
これでやっと楽になれる。
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