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夜風の嵐
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ーくしゅん
「あれ?有馬先輩風邪?」
予習していたノートから視線を上げて、夕祐が戀兎に尋ねた。
「ん?違うと思うよう」
口元を抑えて、戀兎が答えたが、気になってシャーペンを置き、戀兎のいる方へ体を向ける。
額に手を伸ばし、自分のおでこと体温を比べようとして、戀兎がビクリと肩を揺らしたのに気づき動きを止めた。
それに気がついた戀兎が眉を寄せて微笑み、伸ばされた夕祐の手をそっと握って自分の額にあてた。
「どお?大丈夫でしょう?」
「…大丈夫じゃない気がする」
「…え…」
夕祐も眉を寄せて、困り顔だ。
戀兎は瞬いて「心配性だな」って笑ったけど、熱がある気がしたんだ。
「分からない所があるからそんなこと言うのかな?」
眼鏡を光らせて、夕祐のノートを覗くと確かに行き詰まったように迷った後が書いてあり、戀兎が笑った。
本当に熱があったような気がしたんだけど檜山君にも笑われて、そのあと戀兎が隣に張り付いてみっちりお勉強となりました。
夕食の時間
お腹いっぱいで、満足して、檜山と戀兎と部屋に向かって歩いていると。
事件は起こりました。
ードドドドドドドド
「まーてぇー!!」
あれ?この時間に追っかけっこ?ってか追っかけてるの夜風くん?
「ひぃーー!」
あ…逃げてるの岩龍君だ。
意外に足の速い岩龍君、でも夜風君の方が断然早くてあっという間に捕まって、壁に押し付けられている。
「や、や、やめてください」
「なんだよ、いいじゃん」
こらこらこらー!!夜風君何やってんの!!
「夜風君!!」
「夜風!!」
夕祐と檜山が同時に声を張り上げ、その声に、岩龍と夜風がこちらに振り返った。ガタガタ震えた岩龍君が、夜風の腕をスルンと抜けて夕祐の元に走ってきた
「ゆ、夕祐さぁーん(涙)」
夕祐が受け止めて抱きしめてやると、力いっぱい夕祐にしがみついて、ぷるぷる震えている。
そしてなぜか後から夜風が
「夕祐さぁーん(甘)」
と、夕祐に飛びついてきたから、夕祐は岩龍をかばうように背中を向けたら、背中に夜風ががっしりとしがみついて来て、首に手を回し肩にアゴを乗せてスリスリしだした。
「何してるんだ夜風!」
厳し目の檜山の声に、何故か夕祐の腕の中の岩龍がビクリと肩を震わせ、名前を呼ばれたはずの夜風は甘えた声を出した
「何ってぇ?夕祐さんにハグしてる」
「岩龍のこと、追いかけ回してただろう」
「あー、そっち?」
「何してるんだ!」
「前髪邪魔そうだから切ってあげようと思って」
ーシャキシャキ
どこからか取り出したハサミを動かしてみせる夜風
夜風君!!ソレ普通のハサミ!!髪切るやつじゃないから!!
ってそうじゃなくて!!
「よ、夜風君本気?」
「うん☆夕祐さんだってその方が可愛いと思うでしょう?☆」
ああ、眩しい、眩しい笑顔だけど怖いことしようとしてるよこの子
「そうだぞ、夜風、岩龍が怯えてるだろうが!」
「夜風君いくらなんでもやり過ぎだと思いますよ」
続けて檜山と戀兎が突っ込むが、夜風は悪びれず、眉をしかめ
「こいつがハブにされてんのは、態度と顔の見えない前髪だろう?だから切ってやろうとしたんじゃん、こいつだって分かってるよ」
「夜風君、無理やりはよくないでしょ?」
僕のツッコミに何故かニンマリ笑った夜風は耳元で囁いた
「だっておもしろいだろ?」
いじめっ子!完全ないじめっ子!
「遊ぶなよ夜風」
「スキンシップ、スキンシップだってばぁー」
「とにかくダメ!岩龍君は僕が預かります!」
夕祐がピシャリと言って、背中にくっついた夜風のおでこをポンと叩くと夜風がズルリと降りて不満そうに返事した。
「へーい」
「よろしい、ほら岩龍君行こう」
腕の中にいた岩龍をヒョイっと持ち上げて歩き出すと岩龍君が真っ赤になって震えてる
「あ、あ、あ、歩けます」
「いいじゃん、つれてったげるよ」
「ゆ、ゆ、夕祐さん!」
「まぁまぁ」
遠ざかる夕祐と岩龍を眺める3人。
夜風は手を前で握りぶりぶりしながら甘えた声を出す。
「夕祐さんて王子様みたい☆ますます可愛い☆」
「王子様ならかっこいいだろ?」
「ひな兄だって、可愛いって思うでしょ?」
「グッ」
「有馬先輩も思うよねぇー」
「え、まぁ、王子様には見えないけど…」
「えー、そばにいてあの笑顔で微笑まれて、自分ために危険を返りみず木に登ったりとか、魔の手から助け出してくれたりとか、一夜を共にしたら俺だったら惚れちゃうな☆」
「い、いちや…」
「…」
「そう☆」
夜風の言葉に、檜山が絶句する。
「もー、ひな兄は容量小ちゃいな、またフリーズ?、有馬先輩は?」
「え、な、何が?」
「だから、夕祐さん、惚れちゃわない?」
「惚れるって、お、男の子に惚れたりはしないなぁ、」
「ふーん」
「そ、そうだぞ!男の、しかも夕祐って、あんな目が離せない抜けてるやつのどこが王子様なんだよ!」
「え?可愛いとこ?」
しれっと可愛い仕草で首を傾げ、檜山と戀兎に同意を求める夜風
「あのなぁ」
「ひな兄だって可愛いと思ってるくせに」
「あいつは男だ」
「器が小さいなぁ、関係ないじゃん」
「関係ないってお前、ま、まさか」
檜山の慌てぶりを受けて、ニンマリ笑った夜風、絶対悪いことを考えている顔だ。
「恋愛は自由だよねぇー☆」
スキップしながらその場を去って行く夜風
「よ、夜風…」
「……」
可哀想な檜山
今日も小悪魔は嵐を呼びます。
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