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雨音
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僕らの部屋へ引き入れた岩龍君を夕祐のベットへ座らせる。
しばらくしても岩龍は口を開かず、ただ本を握りしめて座っていた。
夕祐と檜山は視線を交わして、檜山は部屋から出て行った。
ーパタン
扉の閉まる音にビクリと肩が強張る…
「…夕食は食べた?」
ふるふると首を横に振る
「何か食べる?」
また静かに首を横に降振る
相変わらず長い前髪が目元を隠しているから、彼が何を考えてるか分からない、せめてもう少し短くて目が見れれば、察してあげることもできるのに、と思いながら夕祐は背中をさすってあげる。
「ごめんなさい」
だいぶ時間が流れて、ようやく岩龍が口を開いた
「ご、ごめんなさい…何かされたとかじゃないんです」
うつむいてた岩龍がさらに背中を丸めて本を強く握る
「み、見ちゃって…」
続けようとした言葉が出てこない
夕祐は、優しく背中を撫でて
「何を?」
とたずねると
ひくりっと口元が引きつり、赤くなった岩龍が青くなる
「マ、マキ先輩が…と、友達を…」
そこまで言って岩龍が口籠って震えだし、夕祐はそんな彼をキツく抱きしめた。
「岩龍君は大丈夫?」
「ぼ、僕は…むしろ…僕…」
?
僕…、と言ったきり、また赤くなった岩龍は両手で顔を覆い動かなくなった。
また沈黙が続く
時間とともに震えは収まってきたようだが一行に顔を上げようとしない岩龍。
夕祐はチラリと時計を見る
もうすぐ点呼の時間だ…
岩龍君このままって訳にもいかないし…
夕祐が悩んでいると部屋の扉がノックされた。
ーコンコン
「はい」
ベットに岩龍を残してドアへ近づく
「夕祐さん、春日です」
外から春日の声が聞こえて、ドアをそっと開ける。
ジャージ姿の檜山と寝巻き姿の春日がいて、湿った髪からシャンプーのいい香りがしていた。
「代わります」
「え、でも」
夕祐の答えを聞き流すように、春日は部屋へ入っていく
「夕祐」
低い声で呼ばれて檜山を見上げると、檜山は黙って首を振った
以前言われた
『お前じゃ解決できない』
そういった時と同じ目をしている。
部屋の中で話し出した2人を見ると、ベットに座った岩龍の前に、春日が膝立ちで視線を合わせ、柔らかく微笑んで語りかける。
檜山の手が夕祐の上に乱暴に乗せられてぐしゃぐしゃしてきた
「いたっ、ちょっと」
「お前じゃ役不足ってんじゃないぞ、同学年の奴に任せろってこと、……一緒にいてやれないだろ」
うん、分かってるよ。
最初っからそういう意味だって、
檜山も経験したんでしょ?
檜山に笑いかけると、檜山は照れたのかそっぽを向いた。
檜山の言うように、学年が違えば見えないことよ方が多い、上級生の僕が力になれることはなりたいが、今の岩龍君には、僕より春日君や夜風君の方が適任だろう
夕祐はそっとドアを締めて、点呼へと向かった。
おそらく今日で最後であろう仕事。
「こんばんは!」
事務所に元気良く挨拶して名簿を受け取る。外回りをしようと思って玄関に行ったら真っ暗で、小雨が降り出していた。
「あ、雨だ…」
降り出したばかりなのか地面はぬれていない
夕祐は回れ右して、中に戻り、名簿を広げた
「よし、まずは一階から」
今日の点呼はいつも以上に丁寧に行った、ホームシックの子や季節の変わり目は体調を崩す人がいるとのことが心配だ、現に中山さんと戀兎が酷い風邪を引いた。
途中で1人体調不良を訴える生徒がいたので、医務室まで付き添った。同室の子が心配してたから、もう一度その部屋に戻り、薬飲んで症状が落ち着いたことを伝え、点呼の続きに戻る。そうこうしていたら、いつもより時間がかかって最後の部屋にたどり着いて終了したら20分以上遅れていた
ふぅ、中等部の子はデリケートな子が多いいな、でも、ただの食べ過ぎでたいしたことなくて良かった。
事務所に名簿を返して、いつもより暗い廊下を歩く、外から雨音が聞こえない、あのままやんだのかと耳をすませて窓を覗く
…
ーサァー
雨音がした気がしたのに、外は雨は降っていない
ーサァー
耳をすませていると、どうやらそれが寮内であることがわかって辺りを見回す。
水音?
誰かお風呂?
いや…ここからじゃ遠いいし
あっ、裏口に運動部や職員用にシャワー室があったっけ…
そっか…
そんなことを考えていたら水音が止まった。
やっぱり先生が使ってるんだ…
そう思ってると、携帯のメールの着信音が鳴って、見ると、戀兎からだった。
しまった、メールまだしてなかった。えっと…岩龍君は、大丈夫で…す…
打ち込みながら歩き出し、点呼で体調を崩した子いたことも打ち込み送信する
「送信…」
「誰に?」
え?
目の前から声がして驚く
「出た!」
立ちふさがってる人物に思わず声を上げる
「幽霊じゃないんだけど…」
「時間外ですよマキ先輩」
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