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難しい本
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戀兎の部屋で本棚を見る夕祐は目を丸くした。
こないだ入った時は薄暗くて分からなかったが、10段ある本棚にびっしり文庫本が並んでいた。
「どんなのが読みたいの?」
「えっとー」
小学生の時に読んでもらったのも字数の多いい難しい本だったが戀兎の解説付きだった、今度は自分で読むのだからそんなの凝ってないサラッとしたのが読みたいが、どれも難しそうで自分では選べない。
「僕でも分かりそうなやつ?」
答えを聞いても戀兎は笑ったりせず、本を探してくれた。
その間に夕祐は、本棚を眺め、昔読んでもらったのも本を見つけて、懐かしさに手を伸ばす。しかし高いところにあった本に少し届かず背伸びしていると、綺麗で大好きな指がその本を取ってくれた。
「はい、これ見たいの?」
本を取る時にわずかに体がくっついた、夕祐は火照る頬を押さえ本を受けとる。
「う、うん!前に読んでもらったやつだよね!」
「…そうだね、ゆちゃんこの話好きだったね」
柔らかく微笑んだ戀兎にドギマギしてしまい、意識を逸らそうと話題を探したがこういう時に限って何も思いつかない。
「コレもう一回読む?それとも新しいの読む?」
「えっと、両方借りてもいい?」
「いいよ、でも貸出は一週間です」
「え!なんか図書館みたい」
「そうですよ、ゆうちゃんほっとくといつまでも借りっ放しでしょ?」
クスクスとおかしそうに笑った戀兎に今度は別の意味で赤面して、夕祐はガックリ肩を落とす。
子供扱いから抜け出すのはしばらく無理そうだとため息が漏れた。
「そうだ、本、岩龍君にも読ませてあげていい?岩龍君、毎週本屋とか図書館行ってるみたいだから、きっと戀兎の本読みたがるよ」
夕祐が顔を上げて戀兎をみたら、戀兎はジッと本棚を見つめていた
「駄目だった?」
夕祐の問いかけに夕祐の方を見た戀兎はにっこり笑って首を傾げる
「なんで?いいよ」
「よかった、戀兎の選ぶ本面白いから、きっと岩龍君も喜ぶよ」
岩龍に戀兎の本を貸して『有馬先輩の本面白かった』って笑う岩龍を想像してた表情が緩む。
だって好きな人のセンスが褒められるのは自分のことのように嬉しい。
「…ゆうちゃんは…」
何かを言いかけて口をつぐんだ戀兎は、夕祐から視線をそらした。
その動きを夕祐は見逃さず苦笑いし。戀兎が話そうとしなかったので、自分もしらんぷりして本に視線を落とす。
「じゃ、この2冊借りていくね」
「うん」
「おやすみ」
「うん、おやすみなさい火浦君」
静かに扉を閉め。
夕祐は自室に向う
借りた本眺めながら廊下を歩く
戀兎が言いかけたのは、岩龍君のことだろう…仲がいいから僕が岩龍君に気があるのかと思ったのかも。顔が引きつってた。違うけど、聞かれてもいないのに否定するのもなぁ…
考えごとをしていたら肩に衝撃を受けた
ードン
「うわ!」
ーバサバサ
廊下を歩いてた生徒とぶつかり手にしていた本が床に落ちた
「ごめんごめん」
「あ、こちらこそすいません」
本を拾ってもらい、今度はぎゅっと胸に仕舞い込む。
折れたら大変だ。
ぶつかった子に会釈してから夕祐は足早に部屋を目指した
その日の夜、夕祐は自分のある持ち物がないことに気が付いた。
檜山の 低い声が響く
「携帯がない?」
「うん、夕食までは持ってたんだけど…」
「落し物なら事務所に届くだろうから明日にすれば?」
「うん」
点呼がすでに終わってる。
可能性は、食堂か、戀兎の部屋か、廊下で人とぶつかった時、それなら事務室に届いてるかも…
気になって眠れずぼーっと天井を眺めていた
外は静かだったがわずかに雨音がしてきて、サァーっと小雨が降り出した
ー
ー
「あれ?」
夜12時を回った頃、何と無く音がしたような気がして窓の外を見る、すると下の道を傘が移動してるのが見えた。
この時間に人?
誰だろう見つかったら大変なのに…
気になって見ていると、傘が前にこぼれて、2人の人間の姿が見えた。
え!?
小雨の降る中、外を歩いていたのは、ジャージ姿の戀兎と布に包まったマキだった。
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